相続税対策としての養子縁組 ③
弁護士の関です。こんにちは。
平成29年1月31日、相続税対策のための養子縁組が有効か否かについて判断した最高裁判決がでました。
前回、養子縁組とは、というお話をしましたので今回はこの最高裁判決について解説したいと思います。
相続税対策と養子縁組に関する最高裁判決
〔登場人物〕
・父親A → Yの養父
昭和6年生。昭和62年ころまで衆議院議員の秘書として働き、福島県安達郡東和町の町長などを務めた人物。平成24年5月8日に養子縁組の届出提出。
・母親B
・長女X1
・二女X2
・長男C(X1・X2の弟)
クリニックの院長を務める医師
・長男Cの息子Y → Aの養子
X1とX2が、Yに対し、YとAとの養子縁組が無効であるとして争った事案。
Yは未成年者であり、実質的には、X1・X2とC(及びその妻)との姉弟間の争い。
●原審の判断
長女X1・X2が養子Yに対して提起した養子縁組無効請求訴訟ですが、平成27年9月16日に第一審の東京家庭裁判所で言い渡された判決は、縁組意思等を欠いていたと認めるに足りる証拠は見あたらないとして、長女X1・X2の請求を棄却しました。
つづいて、平成28年2月3日に東京高等裁判所で言い渡された控訴審(原審)の判決では、「本件養子縁組は、専ら、税理士が勧めたA死亡の場合の相続税対策を中心としたAの相続人の利益のためになされたものにすぎず、Aや代諾権者であるC夫婦において、Aの生前にAと被控訴人(注:Yのこと)との間の親子関係を真実創設する意思を有していなかったことは、明らかというべきである。」と判示し、養子縁組は無効であるとして、長女X1・X2の請求が認容されました。
これに対し、養子Yは上告し、最高裁で争われることになりました。
●平成29年1月31日最高裁判決の判断
最高裁は次のように判示し、養子縁組を無効とした原判決を破棄し、長女X1・X2の控訴を棄却しました。
「養子縁組は、嫡出親子関係を創設するものであり、養子は養親の相続人となるところ、養子縁組をすることによる相続税の節税効果は、相続人の数が増加することに伴い、遺産に係る基礎控除額を相続人の数に応じて算出するものとするなどの相続税法の規定によって発生し得るものである。相続税の節税のために養子縁組をすることは、このような節税効果を発生させることを動機として養子縁組をするものにほかならず、相続税の節税の動機と縁組をする意思とは、併存し得るものである。したがって、専ら相続税の節税のために養子縁組をする場合であっても、直ちに当該養子縁組について民法802条1号にいう「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。
そして、前記事実関係の下においては、本件養子縁組について、縁組をする意思がないことをうかがわせる事情はなく、「当事者間に縁組をする意思がないとき」に当たるとすることはできない。」
判決までをご紹介しましたので、次回はこの判決の持つ意味の解説と養子縁組の注意点などを記して、締めくくりたいと思います。