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岩松正記の数字・大事・いい感じ!
第三十回「旅費日当と大家さん」

大家さんの経理処理でよく質問を受けるのが旅費日当、出張日当についてです。
今回はその解説をします。

1.日当とは?

(1)本質は経費の補填

業務上の出張の際に、通常の旅費(交通費や宿泊代)の他に支給される金銭のことを、旅費日当や出張日当、出張手当などと呼びます。
出張というのは移動距離があって拘束時間が長いなど、通常の業務よりも時間的にも肉体的にも負担があるので、それを慰労するという意味合いから、給料とは別に日当を支給する、とされています。とはいえ好き勝手に支給できるものではなく、あらかじめ定められた旅費規定に基づき、1日いくらとか半日いくらといったように定額で支給されます。

あくまでも業務に伴うものである、という点が重要です。

(2)法人を作るメリットの一つ

では旅費規定さえ作ればいいのかというと、そうではありません。
個人事業主の場合、自分で自分に日当を支給するということになってしまうため、旅費日当等の支給は認められません(従業員に対しては可)。
これが法人になると、あくまでも個人と法人は別人格ですから、自分が代表となった会社を作った場合に、法人から自分に対して日当を支払うのは合法となります。

日当は先に述べたように費用弁償の意味があるので、法人にとっては当然に経費となり(消費税は課税仕入)、それを受け取った側では所得にする必要はありません。このように日当等の処理は節税になるので、一般に法人を作るメリットの一つに挙げられます。

なお旅費規定は役員の規定だけの規定ではダメで、(いないとしても)従業員分の規定も必要です。また、規定を導入したことを決議した株主総会等の議事録とともに、出張の際の出張報告書等を作らないと、税務調査では確実に否認されますのでご注意ください。

2.金額の設定について

(1)いくらならいいのか?

旅費規定を作る際に最も頭を悩ますのは「じゃあ具体的にいくらにすればいいのか」という点だと思います。
他の会社が出張日当をいくらにしているのか、産労総合研究所が行った「2017年度 国内・海外出張旅費に関する調査」が参考になるかと思います。これを見ると、社長の日当の平均支給額は4,621円(宿泊費等は別)、一般社員を100とすると社長で236.5などとなっています。

国家公務員の場合を見てみると、2016年の「旅費業務に関する標準マニュアル」によれば、国内の旅費日当が一番高いのは内閣総理大臣と最高裁判所長官で1日3,800円(宿泊費等は別)、日帰りの場合は100km以上で1日分の2分の1支給、 100km未満で4分の1支給などとなっています。

これらを参考にして自社の旅費規定を作るといいでしょう。

(2)社会通念を大事に

法人を作って自分に役員報酬を支払うと、当然に社会保険料がかかります。一方日当には社会保険料はかかりません。
なので「役員報酬を月5万円、1日の日当を10万円とし、遠方の物件に月5回訪問すれば全部で55万円もらえて所得税も社会保険も5万円分にしかかからない」などという処理を行ってもいいのでしょうか。

答えは当然に「否」です。
日当の是非を争った裁判の判決文には、こう書いてありますので、参考にしてください。

およそ民間企業の旅費規定において定額制を採用し、日当の定額を定めた場合、その金額が物価事情、企業の規模など諸般の事情に照らし、社会通念の許容する範囲を超えた場合には、税務官庁がその超過すると判断される部分の経費性を否認できることは当然すぎるほど当然のことである。そうでなければ、「日当」という名による合法的脱税がいくらでもまかりとおることになるからである。

3.まとめ

日当を支払って節税することは法人設立の大きなメリットの一つです。
しかし、その金額はあくまでも社会通念の範囲内、すなわち常識の許す金額内で決めるようにしましょう。

ABOUT ME
岩松正記
相談指名数東北・北海道地区1位になったこともある税理士。 山一證券の営業、アイリスオーヤマの財務・マーケティング、ベンチャー企業の上場担当役員等10年間に転職4回と無職を経験後に開業。地方在住ながら東京から米国・東南アジアにまで顧客・人脈を持つことから、税務だけでなく様々な投資情報の提供も行っている。ロータリークラブ、青年会議所等で役員を歴任。 税理士会の役員に就く他、元査察の税理士に仕えていたため税の世界の裏事情にも詳しい
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