「不明」とは「明らかでないこと。はっきりと分からないこと。」をいい、「秘匿」とは「こっそりとかくすこと。」をいいます。
はっきりと分からない「不明」な支出とこっそりとかくして「秘匿」した支出があった場合、会社の税金の計算にどのような影響があるのでしょうか。
本稿では、「使途(費途)不明金」と「使途秘匿金」とはどういったものかをまとめていきます。
1. 使途(費途)不明金とは
⑴ 使途(費途)不明金とは
法人税法基本通達9-7-20では「法人が交際費、機密費、接待費等の名義をもって支出した金銭でその費途が明らかでないもの」としており、端的にまとめると「支出先、支出金額」は分かっていても具体的な使い途が明らかでないものをいいます。
⑵ 取扱い
使途(費途)不明金については、全額が損金の額に算入されないこととなります。よって、支出額が全額費用としての損金算入が認められず(否認)、その金額につき法人税が課税されることとなります。
2. 使途秘匿金とは
使途秘匿金は汚職事件をきっかけに導入された制度であり、会社が相手先を秘匿してする支出は裏金となり闇献金や賄賂となり反社会勢力へ資金流入や、公正な取引を阻害しかねないことから、税制上から対策をとるために設けられたものです。
⑴ 使途秘匿金とは
使途秘匿金の支出とは、租税特別措置法第62条第2項にて定義されており、①法人がした金銭の支出(贈与、供与その他これらに類する目的のためにする金銭以外の資産の引渡しを含む。)のうち、②相当の理由がなく、③その相手方の氏名等をその法人の帳簿書類に記載していないものとされています。
ただし、法人の支出のうち相当の理由なく相手方の氏名等を帳簿書類に記載をしていなくても、取引の対価として支払われたことが明らかなものは使途秘匿金の支出には該当しないとされています(税務署長が会社が秘匿するためでないと認めるときも該当しないこととなります。)。
⑵ 取扱い
使途秘匿金となる支出については、使途(費途)不明金と同様に支出額の全額が損金の額に算入されないこととなります。よって、支出額につき法人税が課税されることとなります。
ただし、使途秘匿金については損金不算入のみではなく、ペナルティとしてその支出額につき40%の特別税額が課税されることとなります。
よって、使途秘匿金の支出をした法人はその支出額が損金不算入として課税され、かつ、その支出額につき40%の制裁的課税がされることとなります。
⑶ 具体的な取扱い
通常の経費であれば、100万円の支出をすれば黒字であれば30万円(仮に法人税等の率を30%とした場合)の法人税を減少することとなります。
しかし、賄賂などの使途秘匿金となる支出については、この100万円が損金不算入となるので30万円の法人税が発生し、かつ、その支出額の40%である40万円(100万円×40%)の特別税額が発生することから賄賂の100万円と税金の70万円(30万円+40万円)の合計の170万円の支出となります。
しかし、実際はこの70万円を負担してでも使途秘匿金の支出をする会社は多く、2014年6月までの1年間で1,054法人が60憶円の使途秘匿金の支出をして、24憶円の課税を受けている事実があり、必ずしも制度創設時の「税制による規制」が実現していないことが露呈しています。
まとめ
・取引慣習などもあり、なかなか税制のみでは規制できないのが現実のようです。
・わが家は小遣制で必要に応じて追加されるので明瞭会計です。