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リーゼント先生のやさしい相続
第三十六回「上場株式の相続税評価額」

株式の相続税評価額は、銘柄の異なるごとに、その1株ごとに評価をすることとされています。しかし、株式については金融商品取引所に上場されているものだけではないので、その会社のステータスに応じた評価方法が定められています。
本稿では、上場株式を相続等又は贈与により取得した場合の課税価格となる相続税評価額の算定方法についてまとめます。

1. 上場株式の評価方法

上場株式の相続税評価額は、原則として被相続人が亡くなった日(以降、「課税時期」といいます。)の最終価格によります。
ただし、その最終価格が課税時期の属する月以前3ヶ月間の毎日の最終価格の各月ごとの平均額のうち最も低い価額を超える場合には、その最も低い価額によって評価するとされていますので、具体的には次のような評価方法となります。

【評価算式】

① 課税時期の最終価格
② 課税時期の月の最終価格の月平均額
③ 課税時期の前月の最終価格の月平均額
④ 課税時期の前々月の最終価格の月平均額
①から④のうち最も低いものの価額×取得株数=上場株式の相続税評価額

2. 上場株式の評価方法の具体例

上場株式については市場価格が公開されていることから非常に簡易な評価方法となっています。では、その具体的な評価方法はどうなっているのでしょう。以下の具体例で確認をしてみましょう。

【具体例】

被相続人は令和元年11月12日に亡くなっており、相続人が取得する上場株式10,000株の1株当たりの最終価格等は以下のとおりとなっている。

① 課税時期(令和元年11月12日)の最終価格        1,000円
② 課税時期の月(令和元年11月)の最終価格の月平均額     980円
③ 課税時期の前月(令和元年10月)の最終価格の月平均額    990円
④ 課税時期の前々月(令和元年9月)の最終価格の月平均額   985円

①から④のうち最も低いものの価額が1株当たりの評価額となりますので、②の980円が1株当たりの評価額となり、これに取得株数を乗じることとなりますので9,800,000円(980円×10,000株)が相続税評価額となり、これに相続税が課税されることとなります。

3. 課税時期(被相続人が死亡した日)に最終価格がない場合

課税時期が土曜日、日曜日又は祝祭日の場合は、取引所が休みのため最終価格がないこととなります。このような場合は、課税時期に最も近い日の最終価格をもって課税時期の最終価格とします。以下の具体例にて確認をしてみましょう。

【具体例①】課税時期が日曜日の場合

① 木曜日の最終価格          100円
② 金曜日の最終価格          110円
③ 土曜日の最終価格          な   し
④ 日曜日(課税時期)の最終価格    な   し
⑤ 月曜日の最終価格          120円

この場合の課税時期に最も近い日は課税時期の翌日の月曜日となるため、1株当たりの評価額は⑤の120円となります。

【具体例②】課税時期に最も近い日が複数ある場合

① 木曜日の最終価格          100円
② 金曜日の最終価格          110円
③ 土曜日の最終価格          な し
④ 日曜日(課税時期)の最終価格    な し
⑤ 月曜日(祝日)の最終価格      な し
⑥ 火曜日の最終価格          120円

月曜日が祝日の場合は課税時期に最も近い日は金曜日と火曜日となり、最も近い日が複数あることとなります。この場合は、両日の価格の平均値をもって課税時期の最終価格とするため115円((110円+120円)÷2)となります。

なお、その上場株式に権利落などがある場合には、一定の修正をすることになっています。

まとめ

・課税時期は、贈与の場合には贈与があった日となります。
課税時期の最終価格月平均額はインターネットで日本証券取引所のホームページなどを活用することで簡単に調べることができます。
・その上場株式が複数の取引所に上場されている場合は、納税者の選択した取引所の最終価格を利用することもできます。

 

ABOUT ME
羽藤徹夫
税理士法人 大石会計事務所所属。 高校卒業後は主にガテン系の肉体労働に従事。体力の限界を感じ、税理士試験の勉強を開始。合格を機に税理士試験の受験専門学校へ転職。大原簿記専門学校で相続税法、法人税法の教鞭をとった経験を元に、相続税をやさしくわかりやすく解説。
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