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【第六十二回】弁護士 関 義之が斬る!    「借主が家賃を払わないときの合意の方法」その2

●必ず書面を交わしましょう

弁護士の関です。こんにちは。

家賃の未払があった借主と交渉した結果、借主から、

「払いますからちょっと待ってください。」

とか、                                     「分かりました。もう払えないので退去しますが、もう少し待ってください。」

というようにお願いされた場合に、どのように対応していますか。

この場合には、約束した内容を明確にするために、必ず書面を交わすようにしましょう。
今回は、どのような内容の書面を作成すればよいか、いくつか書式例をご紹介します。

タイトルは、「合意書」でよいです。
出だしを次のような文章にした場合を想定しています。

「○(以下「甲」という。)と○(以下「乙」という。)は、後記建物        (以下「本件建物という。)に関する甲乙間の平成○年○月○日付け建物賃貸借契約  (以下「本件契約」という。)について、次のとおり合意する。」

大家が「甲」、借主が「乙」となります。

書面を作成する趣旨は、将来疑義が生じないように証拠化することにあります。
従って、決めなければならない条件について一つ一つ確認し、それを書面に分かりやすく 明確に記載するように心がけましょう。

●「払いますからちょっと待ってください。」という 場合の書式例

① まず未払があった家賃について、何月分の家賃で、その金額は
いくらかを明確にする条項を作ります。

第○条 乙は、甲に対し、平成○年○月分ないし同年○月分(○か
月分)の本件建物の未払賃料合計○○円の支払義務のあることを認
める。

② 次に、①の支払方法を定める条項を作ります。例えば、一括で
の支払いを約束させた場合の条項は次のようになります。支払期限
を明確にすることがポイントです。

第○条 乙は、甲に対し、前条の金員を、平成○年○月○日限り、
甲の賃料送金先口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手
数料は乙の負担とする。

③ 例えば、家賃が何か月分もたまっていて、これを分割で支払う
ことを認めた場合には、分割払いの約束を守らなかった場合に備え
て、期限の利益喪失条項を作ります。この条項がないと、約束を破
られても、残額について一括での請求ができなくなります。

第○条 乙は、甲に対し、前条の金員を次のとおり分割して、甲の
賃料送金先口座に振り込む方法により支払う。ただし、振込手数料
は乙の負担とする。
? 平成○年○月から同年○月まで毎月末日限り ○円ずつ
? 平成○年○月末日限り ○円
第○条 乙が、前条の分割金の支払を2回以上怠ったときは、当然
に期限の利益を喪失し、乙は、甲に対し、第○条の金員から既払金
を控除した残金及びこれに対する期限の利益を喪失した日の翌日か
ら支払済みまで年○パーセントの割合による遅延損害金を支払う。

④ さらに、約束した分割払いを怠った場合に、賃貸借契約を解除
することも約束した場合には、次のような解除条項及び明渡し条項
を作ります。

第○条 乙が前条により期限の利益を失ったときは、甲は、催告す
ることなく直ちに本件契約を解除することができる。
第○条 前条により本件契約が解除された場合、乙は、甲に対し、
直ちに本件建物を明け渡す。

●「分かりました。もう払えないので退去しますが、もう少し待ってください。」という場合の書式例

① まず、契約を終了させるための条項を作ります。次の例は合意解除の場合です。

第○条 甲及び乙は、本日、本件契約を合意解除する。

② 次に、明渡しの猶予を与える条項及び明渡し条項を作ります。
どのくらいの期間待ってあげるかは、話し合いによります。

第○条 甲は、乙に対し、本件建物の明渡しを平成○年○月○日ま
で猶予する。
第○条 乙は、甲に対し、前条の期日限り、本件建物を明け渡す。

③ 借主が建物を明け渡した後、部屋の中に動産類が残っているこ
とがあります。これを大家が任意に処分することができるような条
項を忘れずに作ります。

第○条 乙は、前条により本件建物を明け渡したときに本件建物内
に残置した乙所有にかかる動産についてはその所有権を放棄して、
甲が任意に処分することに異議がない。ただし、処分費用は乙の負
担とする。

④ その他、未払賃料や明渡し猶予期間中の賃料相当損害金につい
ての取り決めも条項化します。書式例については省略します。

 

 

 

ABOUT ME
関 義之
関 義之
関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士・中小企業診断士 平成10年3月に早稲田大学を卒業し、その年の10月に司法試験に合格。平成12年10月から弁護士登録。中小企業の総合支援を目標に掲げ、平成23年10月から中小企業診断士にも登録。法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、契約書の作成・チェック等、紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。
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