●差し押さえる財産がなければ強制執行できない
こんにちは。
弁護士の関です。
前回、強制執行をするための債務名義を得るために、公正証書や訴え提起前の和解 (即決和解)という制度があることをご紹介しました。
また、公正証書は未払賃料の強制執行をすることができますが、建物の明渡しの強制執行 までする場合には、公正証書ではダメで、訴え提起前の和解(即決和解)まで必要と いうお話しもしました。
もっとも、公正証書があっても、現実的に差し押さえる財産がなければ、強制執行をする ことができません。
また、訴え提起前の和解(即決和解)を申し立て、その和解調書に基づき建物の明渡しの 強制執行をするにしても、かなりの費用がかかります。この費用を回収しようにも、 やはり、賃借人に財産がなければできません。
●事前の情報収集が必要
では、どうやって財産を確認すればよいでしょうか。
公正証書などを作成しても平気で賃料を払わないような賃借人は、その時点で財産の ありかについて問い合わせても、教えてくれません。
従って、この時点での財産の調査には限界があります。
そこで、いざというときのために、事前に情報収集をしておくことがポイントとなります。
情報を聞きやすいのは、
・新規に賃貸借契約を締結する時点
・分割払いなどの合意をする時点
です。
このような場面であれば、契約や合意をする条件として情報の開示を求めやすいからです。
そして、確認しておきたい情報としては、
会社員であれば勤務先(合意時であれば賃貸借契約後に転職していないか確認して ください。給与の差押えが可能となります。)
個人事業主であれば主要な取引先(売掛金の差押えが可能となります。)
取引銀行(給与振込口座やメインバンク。支店まで確認。金融機関の口座の差押えが可能となります。)
加入している生命保険・学資保険(解約返戻金の差押えが可能となります。)などです。
このあたりの財産であれば、差押えの手続が比較的容易です。
また、連帯保証人がいる場合には、連帯保証人の財産についても同じように情報を確認 しましょう。また、賃借人は所有不動産を持っていないことが多いと思いますが、 連帯保証人であれば持家がある可能性があります。
いずれにしても困ったときには弁護士に相談するようにしましょう。