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渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第五十一回
「家賃モラトリアム法制定前に知っておきたい事実! 家賃減額による固定資産税減免で得する大家いるの?」

コロナによってテナントの売上減少が著しく、大家の家賃支払いも厳しい状況。

一方大家側も借り入れの返済があることから家賃の減額が難しい状況。

いよいよ家賃モラトリアム法が制定される動きになってきています。

家賃モラトリアム法ができれば、融資や助成金を使って家賃が補てんされる見込みなので、大家さんにとっては、一安心かもしれません。

しかし、その法案が本当に大家さんにも無傷になるのか、懸念しているところです。

ネット記事を見ると、「大家は、家賃減免による固定資産税が減免されることで、家賃減額よりも得をする人もいる」というような意見がありました。

本当にそうなのか?

その発言した方のブログを見ると、計算式までご丁寧にされていて、そのからくりがわかりました。

固定資産税の全てが免除されると勘違いされておりました。

まだ確定ではないものの減免対象は下記とされています。

<減免対象>
・設備等の償却資産及び事業⽤家屋に対する固定資産税(通常、取得額または評価額の1.4%)
・事業⽤家屋に対する都市計画税(通常、評価額の0.3%)

家屋の固定資産税だけが対象であって、土地は対象とされていないのです。

では、どのくらい減免になるのか。

(例)市場価額で土地5億円・建物(テナントビル)5億円の場合

《土地の固定資産税・都市計画税》
(1)5億円×0.7(※)=3億5,000万円(固定資産税評価額)
※固定資産税評価額は市場価額の7割と言われていますので、0.7をかけています。

(2)3億5,000万円×0.65(※2)=2億2,750万円(課税標準額)

※2 固定資産税額を大きくならないように負担調整措置がされ、商業地の場合、評価額の0.65(東京都23区の場合。通常は0.7)が上限になるため、0.65をかけています。

(3)2億2,750万円×1.7%=387万円

《建物の固定資産税・都市計画税》
(1)5億円×0.6(※3)=3億円(固定資産税評価額・課税標準額)
※3 建物の固定資産税評価額は建築費の4割~7割くらい(構造により異なる)と言われているため、0.6をかけています。

(2)3億円×1.7%=510万円

固定資産税887万円のうち510万円が減免の対象です。
表面利回り5%とすると家賃は、月約416万円。
家賃3カ月間50%減額すると、建物の固定資産税と都市計画税が免除。
つまり、416万円×3カ月×50%=624万円家賃を下げると510万円の免除になります。

減額家賃<減免額にはなっていないのです。

土地と建物の価額の比率が5:5でもこのような状況。
都内なら土地の比率が高いところの方が多いと思います。

建物の価額の比率が大きい地方や、超高層ビルを所有している一部大手企業なら、
減額家賃>減免額はありえるかもしれませんが。。。

しかも、テナントビルの土地は、固定資産税評価額を200㎡まで(戸あたり)1/6にしてくれる住宅用の軽減の対象にはならないので、必然的に土地の固定資産税が高いのです。

このような状況を知らないで、家賃モラトリアム法案が議論されていると思うと、ギョッとしてしまうのは私だけでしょうか?

「大家ばっかり得している。」「家賃下げない大家は悪者だ。」なんて風潮にならないようにしっかりとこの事実を、大家さんは認識しておきましょう。

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まとめ

・固定資産税の減免の対象になるのは建物だけ。

・テナントビルの土地は、住宅用の軽減がなく、固定資産税が高額になる。

・家賃モラトリアム法が大家さんにとって不利にならないような方向に声をあげましょう。

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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