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【第九十三回】弁護士 関 義之が斬る!     「弁護士が語る 相続法改正について」その2

●遺留分とは

弁護士の関です。こんにちは。

今回の特集は、遺留分制度に関する見直しの解説です。

みなさんは、「遺留分」(いりゅうぶん)という言葉をご存知でしょうか。
事業承継のセミナーなどにいくと、よく出てくるワードです。

遺留分とは、一定の相続人のために、遺言や生前贈与によっても
被相続人が自由に処分できない一定割合のことをいいます。

被相続人は、自分の財産については、遺言や生前贈与により、
だれに何をあげようかと自由に決めることができるのが原則ですが、
民法は、遺族の生活保障等のために、被相続人の自由な財産処分に
一定の制約を課しています。
これが遺留分制度です。

遺留分はすべての相続人にあるわけではありません。
相続人のうち遺留分がある者(これを遺留分権利者といいます)は、
配偶者、子、直系尊属(親など)に限られ、
兄弟姉妹には遺留分はありません。

また、遺留分の割合は、相続人によって異なっています。
まず遺留分権利者全体に残される割合
(これを総体的遺留分といいます)
を求めますが、これは、直系尊属のみしか相続人がいない場合は
3分の1、それ以外の場合は2分の1となっています。

次に、個々の遺留分権利者の割合
(これを個別的遺留分といいます)
を求めますが、これは、先ほどの総体的遺留分に、
それぞれの法定相続分を乗じて算出します。

例えば、被相続人(死亡した人)が父、そのときの相続人が母、
長男・次男の3人であった場合で考えます。

まず総体的遺留分は、直系尊属のみ以外の場合ですから、
全体で2分の1となります。

次に、個別的遺留分を計算しますが、例えば、長男で考えますと、
総体的遺留分2分の1に長男の法定相続分である4分の1を乗じて、
8分の1となります。

そして、被相続人が、この遺留分を侵害するような遺言や生前贈与を
した場合に、遺留分権利者がその権利を回復できる制度が遺留分制度です。

例えば、先ほどの4人家族で、被相続人の遺産が自宅の土地建物のみであったとします。

被相続人が、この土地建物を次男にすべて相続させるという遺言を残したとします。

そうすると、配偶者である妻(遺留分4分の1)と
長男(遺留分8分の1)は、それぞれ、自分の遺留分を侵害している
として、次男に権利の回復を求めることができます。

 

●①遺留分減殺請求権から遺留分侵害額請求権へ   (金銭債権化)

この遺留分の権利の回復を求める方法として、これまでの民法(相続法)では、
遺留分減殺請求権という権利を認めていました。

具体的には、遺留分権利者が、遺留分減殺請求権という権利を行使すると、
遺言や生前贈与が侵害の限度で失効し、その目的物が遺留分権利者に
当然に帰属すると解されていました。

先ほどの例でいうと、
例えば、長男のみが遺留分減殺請求権を行使すると、
自宅の土地建物は、長男が8分の1、次男が8分の7の共有になり
(物自体が戻るということで、現物返還といいます)、
その後、この共有状態を解消するには共有物分割という民法の手続が
必要となっていました。

ただし、長男が物を返すのではなくお金で解決したいというときは、
その侵害額相当のお金を払えば物の返還を免れることができました。
これを価額弁償といいます。

つまり、原則は現物返還、例外は金銭解決という立て付けになっていました。

今回の相続法改正により、この遺留分の権利を回復する方法が大きく変わり、
遺留分減殺請求権が、遺留分侵害額請求権という金銭請求権になりました。

つまり、改正により、例外であった金銭解決が原則となりました。

先ほどの例で、土地建物の価値が合計6000万円であったとしますと、
長男が遺留分侵害額請求権を行使した場合、
次男に、750万円(6000万円×8分の1)の支払いを求めることに
なります。
この場合、土地建物は共有とはならず、遺言のとおり次男が
単独で所有することになります。

事業承継の場合、遺言や生前贈与により事業用の財産
(会社の株式や事業で利用している不動産など)を後継者に取得させようと
考えますが、これにより後継者以外の相続人の遺留分を侵害してしまうと、
後継者と非後継者との間で事業用財産が共有となり、
この共有関係の解消のために紛争になることが多く、
円滑な事業承継の妨げになるという指摘があったことから、
このような制度改正が行われたといわれています。

 

ABOUT ME
関 義之
関 義之
関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士・中小企業診断士 平成10年3月に早稲田大学を卒業し、その年の10月に司法試験に合格。平成12年10月から弁護士登録。中小企業の総合支援を目標に掲げ、平成23年10月から中小企業診断士にも登録。法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、契約書の作成・チェック等、紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。
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