「不動産に賃料値上げの要素」
皆さん、こんにちは、不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
最近、特に冷え込むようになりましたが、
お風邪などひいていないでしょうか。
師走に入り、今年もあと残り1ヵ月。
忙しいこの時期、元気に過ごし、新年を迎えたいですね。
今回は、皆さんお持ちの不動産に賃料値上げの要素はないのか?
ということを、賃料の不動産鑑定評価の観点から、お話したいと思います。
1.「下げ圧力」に注意!
地価が上昇を続けている最近は、賃料の鑑定評価のご依頼が多くなっています。
大半が賃料増額ですが、減額のための鑑定評価も若干ではありますが受けております。
同じ傾向が、ちょうど十数年前の地価が上昇していたファンドバブルの一時期にも集中して多くありました。
ここで、賃料の鑑定評価において、一つ気を付けなければいけないことがあります。
それは、地価の上昇局面では、確かに賃料も上げやすいのですが、
そもそも、今と比べて昔の景気の良い時期に賃貸借を締結、または最終合意して
現行賃料を決定している場合には、昔の経済情勢の方が良い為、
賃料を上げる要因が少なく、結果的に賃料を上げられないということです。
そのような場合には、むしろ、
「賃料の下げ圧力」が働くことも多くありました。
つまり、
「その景気の良いときでその現行賃料なら、今はその当時に比べ、
そこまで景気が良いということではないので、むしろ賃料は低い方が妥当ですよね。」
という反論です。
ファンドバブルの時期は、一般的に、賃料増額交渉が多かったのですが、
一方で、
全国展開しているファーストフード店やロードサイド店舗については、
賃料減額交渉が多くありました。
それは、景気が良い時期、または、その余韻がおおきかった平成10年以前に
賃貸借契約を締結したものが多かったためです。
バブル崩壊以降、地価は下落局面が長かったことが、その要因と言えます。
このように、当時と今の経済状況を十分に加味した慎重な算定が重要となります。
2.新規賃料と継続賃料から増額ポイントを見出す!
賃料には、「新規賃料」と「継続賃料」とがあります。
「新規賃料」とは、その文字の通り、これから新たに賃貸借契約を締結するときに
求める賃料になります。
一方、「継続賃料」とは、こちらもその文字通り、賃貸借等の継続に係る特定の当事者間 において成立する賃料を言います。
例えば3年ごとに賃料の見直しなどを行うときに、既存の賃貸借契約を前提に、
市場賃料とどの程度乖離が生じているかというときに算定を行う場合になります。
この2つの賃料概念を踏まえた上で、
① 新規賃料と比べて、現行賃料が高いのか低いのか、
ということと、
② その現行賃料が決まった経済情勢と、現時点の経済情勢も併せてみないといけない ということです。
例えば、空室率をできるだけ低くするために、
昔、市場賃料に比べて、低めに設定してしまった場合です。
そのような場合には、最近の地価の上昇により、固定資産税なども上がりますので、
賃料も上げ易い要因として、強く働くということにつながります。
私が行った鑑定では、固定資産税が1.5倍になってしまった事案などもありました。
これは、賃料増額交渉のための大きな根拠となる要因でした。
3.まとめ
以上のことから、賃料増額交渉ができるかは、
① 「現行賃料が市場賃料と比べ低すぎないか」
② 「その現行賃料を合意した時点の経済情勢と
今の経済情勢とを比べ、今の方が有利になっているか」
との比較が必要になります。
また、賃料増額に成功し、その後、高く売却され、しっかり、出口戦略も見据えて いらっしゃるご依頼者様もいらっしゃいました。
皆さんのお持ちの不動産に、少しでもお役に立てればと思います。
今回もお読みいただきましてありがとうございました。