『大家さんの火災保険』
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒﨑です。
今週の特集は「アパートの地震保険、隠れた補償」になります。
●地震保険の概要
地震保険の対象となる建物は、居住用建物(住居のみに使用)になりますので、
店舗や事務所のみに使用される建物は加入ができません。
例えば、1階に店舗があり、2階以上は住居専用に使用されている建物
(併用住宅)は、どうでしょうか?
こちらに関しては、加入できる保険会社もありますので、
アパートは基本的に地震保険に加入することができると言えます。
補償の内容は、地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災、
損壊、埋没、流失によって建物に損害が生じた場合に保険金を請求することができます。
保険金は、火災保険のような実際の修理費ではなく、
損害の程度に応じて地震保険の契約金額の100%(全損)、60%(大半損)、
30%(小半損)、5%(一部損)が支払いされるのが特徴的ですので、
建物の修理に限定せずに、生活再建資金として活用することを想定している保険です。
地震保険は損害保険会社と国で運営していますが、
1回の地震等による損害保険会社全社の支払保険金総額が11兆7,000億円を超える場合、
支払いする保険金は削減されることがあります(令和元年8月現在)が、
東日本大震災が発生したときには、削減することなく保険金は支払いされました。
なお、1回の地震とは、最初の地震発生日から3日(72時間)以内の地震をさしています。
●地震保険の保険金額(アパート)
地震保険の契約金額は、火災保険の保険金額の30%~50%の範囲で設定をしますが
建物の保険金は5,000万円が上限とされています。
但し、アパートのように複数世帯が居住する共同住宅の場合は、
世帯(戸室)数×5,000万円を建物の限度額とすることができますので、
例えば、1棟18戸であれば、9億円を限度とし、
火災保険金額の30%~50%範囲を契約金額とすることができます。
●地震保険の時価額計算
地震保険は、損害の額が時価額に対して○○%の場合に○○円という
支払い方法になります。
この時価額の理解ですが、不動産売買価格や不動産鑑定額や簿価ではありません。
建物の価値(時価)は、経年劣化とともに減少していきますので、
売買価格であれば0円になるのではと思いますが、損害保険の場合は考え方が異なります。
建物が全損扱いとなり、再度同じ建物を建築する場合の価格を再調達価額と言いますが、
その価額の50%を時価とみなしています。
つまり、通常は、再調達価額が火災保険の保険金額となりますので、
時価額は地震保険の保険金額上限(火災保険金額の50%)となります。
例えば、再調達価額が4,000万円の一棟6戸アパートに、
火災保険4,000万円、地震保険2,000万円の保険金額を設定。
築40年のアパートが地震で全損の損害認定を受けた場合、
居住の用に供しているアパートであれば、
経年による消耗劣化分を差し引いても50%の残価率があるものと考えますので、
時価額が4,000万円×50%=2,000万円を下回ることはなく、2,000万円(全損は100%)
を受取ることができます。
●隠れた補償
鉄筋コンクリート造と鉄骨造アパートの場合は、
沈下または沈下を伴う傾斜による補償、木造アパートの場合は、
地盤液状化による傾斜や沈下が補償の対象になっていまして
建物の構造によって、損害の程度(全損・大半損・小半損・一部損)が異なります。
例えば、木造アパートの場合は、地震による地盤液状化により1.7/100(約1°)を超える傾斜
もしくは最大沈下量が30cmを超える場合、地震保険で全損扱いになります。
鉄骨造の場合は、最大沈下量が40cmを超える沈下もしくは沈下を伴う傾斜が 3.0/100(約1.7°)を超える場合が全損扱いになり、鉄筋コンクリート造の場合は、
最大沈下量が100cmを超える沈下もしくは沈下を伴う傾斜が2.1/100(約1.2°)
を超える場合が全損扱いになります。