渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第九十一回
私の履歴書㉑～法務部時代の忘れられないエピソード中編～
渡邊浩滋総合事務所の10周年の節目として自分自信のことを振り返っています。
2021年12月4日に丸10年を迎えました。
10年やってこられたのも、支えてくださった皆様、スタッフのお陰です。
今後ともよろしくお願いいたします。
もう一つ商社の法務部時代の忘れられないエピソードです。
取引先の社長は倒産前からの病気で連絡が付かず…
取引先の社長は、倒産前から病気で入院しているとのことで連絡が着きません。
自宅に手紙を出したところ、社長の娘から反応がありました。
娘さんとは、喫茶店でお会いしました。
私が24歳くらいの頃で、当時の私よりも２～３歳上のような感じがしました。
年齢も変わらない人にお金の話をするのは気が引けるなと思いながらも、仕事として割り切らなければなりません。
「お金を何とか工面してもらえませんか？払ってもらえなければ自宅を競売にかけるしかないのです。」
「お金はありません。この自宅は私が育った場所です。そこを追い出されてしまうのでしょうか？何とかならないでしょうか？」
切実な目で訴えかけられました。
「私は債権者なのでどうすることもできません。親戚の方にかけあってください。」
ぴしゃりと断言して、その日は終わりました。
とても気が重い仕事です。
２週間がたった頃に、電話がかかってきました。
「親戚にも話したのですが、どうすることもできないと言われました。自宅を競売にするにも、もうお任せするしかありません。」
落ち込んだ細い声でしたが、覚悟が決まった意思は伝わりました。
直接払ってくれない以上、競売にかけるしかありません。
気が重いまま手続きを粛々と進めていったのです。
自宅の３分の２の持ち分なんて、誰も購入しないだろう。
きっと、競売で買い手がつかなくて流れてしまうだろう。
うちは回収できないけど、社長家族は自宅を追い出されなくて済んでくれないかな。
職務とは裏腹な感情を抱いたまま、競売手続きが開始されました。
（続く）
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