『大家さんの法人化と金融サービス』
こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒崎です。
今週は、法人大家さんの
「有効的な退職金制度」について情報提供いたします。
専業大家さんは、
会社の事業形態が個人事業主・法人に関わらず、
オーナー社長という立場になります。
そのため、将来の退職金準備については
自分自身で計画的に備える必要があります。
今回は、法人大家さんに焦点をあてて、
2つの退職金制度について解説いたします。
●小規模企業共済●
小規模企業共済は、加入資格にいくつかの制限があり
サラリーマン大家さんや専従者は加入することができません。
専業大家さんには選ばれている退職金制度です。
毎月の掛金は1,000円~70,000円の範囲内(500円単位)で
設定ができ、本人の個人口座からの引落しにより納付をします。
掛金は全額が所得控除となるため、
将来の退職金を資産形成しながら所得税や住民税の
軽減をすることもできます。
掛金の運用は、運営主体が株式や債券等に投資して行いますが、
加入者は予定利率1%での運用が最低保証されています。
予定利率とは複利による年率計算ではないため、
預貯金や年金保険よりも高い商品だと
誤解をしないようにしましょう。
退職金として給付を受ける老齢給付の年齢は65歳以上となり、
それまでの掛金納付期間は15年以上必要となります。
年金による受給を選択すると、
雑所得として公的年金等控除が適用できます。
一時金による給付を選択すると、
退職所得として退職所得控除が適用できますので、
退職金を受け取る時の税制メリットは大きいです。
デメリットとしては、掛金納付月数が12ヶ月未満の場合は、
全額が掛け捨てになる場合があります。
また、加入期間が20年(240ヶ月)未満の場合は、
元本割れとなります。そして、掛金の増額や減額をした場合は、
増額や減額の前と後で、それぞれの加入期間が20年(240ヶ月)
未満の場合は、元本割れが発生するため注意が必要です。
●企業型確定拠出年金(DC)●
企業型確定拠出年金(以下DC)は、
社会保険の適用事業所で厚生年金に加入している役員や社員が
加入できる退職金制度です。
毎月の掛金は5,000円~55,000円の範囲内(1,000円単位)で
会社の年金規約に基づき設定でき、
法人の口座からの引落しにより掛金を拠出します。
そのため、掛金分は給与収入には含まれず、
加入者の所得扱いとはならないため、
所得税や住民税の課税対象とならないだけでなく、
社会保険料の算定基礎からも除外されます。
将来の退職金を資産形成しながら所得税や住民税の軽減、
社会保険料の減額をすることもできます。掛金の運用は、
投資信託や預金、保険商品を加入者個人が選択して運用を行い、
運用益は非課税となります。そのため、
DCを導入している事業主には、
加入者に対する継続的な投資教育を責務としています
(確定拠出年金法第二十二条)。
退職金として給付を受ける老齢給付の年齢は60歳以上となり、
それまでの掛金納付期間は10年以上必要となりますので、
これらの期間については小規模企業共済よりも短いです。
しかし、60歳になるまでは原則引出しをすることができない点は、
任意解約ができる小規模企業共済よりも流動性が低いと言えます。
年金による受給や一時金による給付による税制メリットは、
小規模企業共済と同様です。
DCを導入する事業主のデメリットとしては、
厚生労働省への申請、会社単位の月額固定費、
投資教育への負担や費用がデメリットとも言えますが、
これらの費用は福利厚生費として損金処理ができます。
小規模企業共済とDCは併用することができるため、
掛金に余裕がある場合は併用の検討も良いと思いますが、
どちらかを選択する場合は、厚生年金に加入しているなら、
社会保険料のメリットが享受でき、
複利の効果が期待できるDCに軍配が上がるでしょう。
将来の退職金や年金の備えは、税制メリットもある退職金制度を活用し、
計画的に準備をしましょう。