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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第299回】ファイナンシャル・プランナー
駒﨑 竜が斬る!①

『大家さんと融資の付き合い方』

こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒崎です。
今月の特集では、『融資』をテーマに情報提供をいたします。
1回目は「フルローンか頭金を入れるか」、
2回目は「元金均等返済か元利均等返済か」、
3回目は「繰上返済はするべきか」、
4回目は「借換えするべきか」になります。

最初のテーマは、
「物件購入時はフルローンか頭金を入れるか」になります。
物件の収益性や担保評価によっては、
そもそも頭金がないと融資を組めないことになりますが、
それはさておき、お金の収支としてどうか、
という点で検証をしてみる価値はあります。
具体的には、利回りと空室率の関係、
売却とローン残債の関係、自己資金運用との関係、
返済総額と手元資金の関係の複数の視点で検証をしてみることにします。

■利回りと空室率の関係
例えば、購入価格5,000万円、
借入額5,000万円、金利2.5%、返済期間30年の場合、
月々の返済額が197,560円、年間返済額2,370,720円となります。
ここで、経費率が20%とした場合に、表面利回り10%の物件であれば、
空室率32.59%まで耐えられます。表面利回り8%の場合は、
空室率20.8%まで、表面利回り6%の場合は、空室率0.98%までとなり、
利回り6%でフルローンにすると、
資金繰りに困窮するリスクが高いということがわかります。
それでは、借入額3,500万円(融資率70%)にした場合はどうでしょう。
利回り6%の場合でも、空室率24.69%まで耐えることができますので、
購入物件の利回りによっては、頭金を入れないと経営破綻の可能性があります。

■売却とローン残債の関係
物件価格が下落した場合、売却したいタイミングでローンの残債が残り、
売却できない可能性があります。
仮に5年後の売却価格が4,300万円(5,000万円から14%下落)になった場合、
借入額5,000万円のフルローンでしたら、残高が44,037,719円残っています。
売却時の手数料も踏まえると、自己資金の負担がかかることは予想の通りです。
それでは、借入額4,000万円(融資率80%)にした場合はどうでしょう。
5年後の残債が35,230,175円となりますので、
売却時の仲介手数料を支払いしても残債を返済することができます。

■自己資金運用との関係
借入額3,500万円(融資率70%)の場合、1,500万円の自己資金を利用しているため、
フルローンと比べると月々の返済額が少なく利息負担も少ない。
10年後までの支払利息の総額は7,692,754円となる。
フルローンの場合は、10年後までの支払利息の総額は10,989,649円となるため、
融資率70%と比較すれば格段に利息負担が多いことがわかるが、
フルローンの場合は手元資金1,500万円を運用することができる。
年率2.5%で10年間運用した場合、税引後の運用益は3,347,781円となり、
支払利息の総額から運用益を差引きすれば7,641,868円となる。
つまり、融資利率と運用利回りが同じ数値であれば、
複利計算となる運用益は有利となり、
頭金を入れるよりも運用した方が良いという結果になる。

■返済総額と手元資金の関係
5,000万円の物件で表面利回り8%、経費率20%、
空室率15%の場合、NOIが260万円となり、30年間同じ数値で稼働したと仮定した場合、
NOI合計7,800万円となる。
借入額3,500万円の場合は返済総額が49,785,120円となるため、
自己資金1,500万円を入れて生み出した収支は28,214,880円になる。
(税金は加味していない)
借入額5,000万円の場合は返済総額が71,121,600円となるが、
自己資金1,500万円を2.5%で運用できれば、
30年後の運用資産が28,118,951円に増加しているため、
34,997,351円が手元資金になったと考えることができるでしょう。

まとめると、フルローンで手元資金1,500万円を運用する方法が
最も有利な戦略となりました。
但し、資金繰り面の不安があるため、
融資が満額可能となるには、保有資産(有価証券含む)や
年収等の資産背景が鍵となるでしょう。

 

ABOUT ME
駒﨑竜
エターナルファイナンシャルグループ株式会社。代表取締役 ファイナンシャルプランナー。 中古車販売会社の取締役時代に資金調達・会計・税務など年商50億円の会社経営に携わった後、大手アパート専業デベロッパーにて土地活用の経験を積み2007年に起業。FP個別相談数は1,500世帯。損保・ローン19年、生保15年、投資家経験13年、融資5年、証券・海外投資3年のキャリア。
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