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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第301回】ファイナンシャル・プランナー
駒﨑 竜が斬る!③

『大家さんと融資の付き合い方』

こんにちは。ファイナンシャル・プランナーの駒崎です。
今月の特集では、『融資』をテーマに情報提供をしています。
3回目は「繰上返済はするべきか」になります。

貯蓄が十分にある場合は、
借入れしているローンの繰り上げ返済を検討することができます。
借金が嫌いな人にとっては前向きに検討したいことだと思いますが、
繰り上げ返済をするべきか、しないべきかを考えるにあたり、
複数の視点から検討をする必要があります。

●相続税額はどうなるのか
●相続税納税資金との関係はどうか
●団体信用生命保険はどうなるのか
●借入金の総返済額はどうなるのか
●月々のキャッシュフローはどうなるのか
●資産運用との比較はどうか
順番に解説していきます。

■相続税額はどうなるのか
例えば、資産3億円(現金1億円、不動産2億円)に対して、
借入金3億円ある場合、差引0円ですので、
相続税はかからない状況です。
この資産のうち、
現金1億円を繰り上げ返済すると次のようになります。

<例>
(現状)
現金 1億円
不動産 2億円
(資産合計 3億円)
借入金3億円
(正味の財産 0円)

(繰り上げ返済後)
不動産 2億円
(資産合計 2億円)
借入金 2億円(3億円-1億円)
(正味の財産 0円)

資産2億円に対して、借入金2億円となるため、差引0円です。
繰り上げ返済をする前と同じく相続税はかかりません。
つまり、借入金を繰り上げ返済することで
資産からの債務控除額が減ることになりますが、
繰り上げ返済により資産も減ることになるため変わらないのです。
手元に現金を残しておくか、金融機関に返済してしまうかの違いですので、
資産-債務の額に変更はありません。そのため、
繰り上げ返済をしてもしなくても相続税には影響がありません。

■相続税納税資金との関係はどうか
相続税の納税は現金納付により行います。
そのため、相続税が0円であれば、繰り上げ返済をしても問題がありません。
相続税が0円でなければ、相続税納税資金を備えておく必要がありますので、
繰り上げ返済はしない方が良いでしょう。
また、生命保険を活用すれば、
支払い保険料以上の死亡保険金を受け取れる効果がありますので、
現預金の一部は生命保険の保険料に充てると良いでしょう。
また、納税資金を生前贈与で備える方法もあります。
このように繰り上げ返済の資金以外で相続税納税資金を備えていれば、
繰り上げ返済をしても問題はありません。

■団体信用生命保険はどうなるのか
団体信用生命保険の保険料が借入金の金利に含まれている場合は、
借入金が減ることで保障額が減額となります。
また、総返済額も減額されるため、間接的に保険料のコストも軽減されます。
保険料を返済額とは別で支払いしている場合は、
借入金が減ることで次回支払う保険料が予定よりも減額されますので、
保険料の支払いコストも軽減されます。

■借入金の総返済額はどうなるのか
繰り上げ返済をすると、利息の支払い額を軽減することができます。
月々の返済額を減らす「返済額軽減型の繰り上げ返済」の場合、
返済期間はそのままにしますが、
借入金の元金が減ることで利息を軽減する効果があります。
返済期間を短くする「期間短縮型の繰り上げ返済」の場合、
返済額はそのままにしますが、返済期間が短縮されますので、
短縮期間中の利息が0円となります。
そのため、「返済額軽減型の繰り上げ返済」よりも
利息の軽減効果が高くなります。いずれの方法でも、
繰り上げ返済をすることで、借入金の総返済額を軽減することができます。

■月々のキャッシュフローはどうなるのか
「返済額軽減型の繰り上げ返済」を行うことで、
月々の返済額を下げることができます。
例えば、2002年2月に借入金8億円、金利1.50%、
返済期間30年(360回)、
月々返済額2,760,961円で借入れし、
20年後(2022年1月)の残高が約3億円(30,985万円)の状況で、
繰り上げ返済1億円を行った場合、残高約2.1億円(20,985万円)、
新返済額1,869,925円、月々の返済軽減額が-891,036円になりますので、
繰り上げ返済をすることでキャッシュフローの改善ができます。
利息の軽減効果は7,815,433円です。
なお、繰り上げ返済には、
繰り上げ返済手数料が発生する場合がありますので、
手数料を加味してシミュレーションをする必要があります。

■資産運用との比較はどうか
2002年2月に借入金8億円、金利1.50%、返済期間30年(360回)で借入れし、
2022年1月(残10年間)の残高が約3億円(30,985万円)の状況で、
「返済額軽減型」の繰り上げ返済で1億円利用した場合、
利息の軽減効果は7,815,433円でした。
例えば、1億円を繰り上げ返済には利用せず、
1億円を資産運用商品に投資し、年率1%で10年間運用できた場合は、
8,336,814円(税引き後)の利益となります。借入れは単利計算、
投資は複利計算のため、このような効果が出ます。
将来の経営に資金を役立てる場合には、
資産運用を検討するのも一つの選択肢です。

【まとめ】
相続税の納税資金が確保できているのか、
物件購入の予定はあるのか、
資産運用の必要性はどうかを検討し、
繰り上げ返済を実施するかの判断をしましょう。

ABOUT ME
駒﨑竜
駒﨑 竜(Komazaki Ryu) 経済力コンサルタント、ファイナンシャル・プランナー エターナルフィナンシャルグループ(株)  代表取締役 エターナルウェルスマネジメント(株) 代表取締役 一種外務員、貸金業務取扱主任者、 二級FP、損害保険大学、生命保険大学 マネーの達人・週刊ダイヤモンド・価格ドットコム・KINZAI・ 不動産日記(税金の手引き)・税の知識(相続贈与)・ 住宅新法(事業資金調達)・住宅ローンアドバイザー通信など、 専門家としての執筆、監修をしている。
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