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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第361回】
保険×不動産マイスター津曲(つまがり)が贈る    ~こんな時どうする?!大家さんの“生前”リスクを考える~ その④

~こんな時どうする?!大家さんの“生前”リスクを考える~ 

今月号は、保険×不動産マイスター 津曲(つまがり)巖(いわお)より、
お届けさせていただきます。

前回までは、高齢化による認知症や身体介護になった時のリスク・ヘッジの
「切り札」ともいえる「民事(家族)信託」(以下「民事信託」と統一します。)
について、その仕組みとメリットをみてきました。

最終回では、「民事信託」は「両刃の剣」となりうる?!をみていきましょう。

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● 「民事信託」のデメリットは・・・
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「民事信託」のデメリットとして、よく言われることを整理します。
1.「受託者」に権力が集中してしまうこと
2.税金面で「損益通算」ができないこと
3.「信託契約」の仕方で「贈与税」が発生してしまう
4.「30年ルール」がある
5.「身上監護権」がないこと
などが一般に言われています。

それぞれについて内容を確認しましょう。

1.について、
「受託者」のみが財産の管理・運営・処分等の権限を持つため家族間での、
意見調整ができてないと思わぬトラブルとなってしまいます。
また、「受託者」もニンゲンですので、心変わりのリスクは常に負います。
実際に、受託者が勝手に不動産を処分したりする例も少なくありません。

2.について、
「受益者」は信託財産から「損失」が発生して他の所得との
「損益通算」という税金面での優遇措置は適用できません。

3.について、
「信託契約書類」を経験値の少ない専門家やご自身で作成したときに
おこりがちですが、「委託者」と「受益者」が異なる契約を結んでしまうと
「受益者」に思わぬ贈与税が発生してしまうというリスクがあります。
「委託者」と「受益者」は同じとするのが原則です。

4.について、
信託契約では、「受託者」を子、孫そしてひ孫へと受託者を指定することが
可能ですが、信託契約後30年経つと受益権の新たな取得は
一度だけとなってしまいます。
子が受託して30年経過後亡くなると孫への承継は可能ですが、
ひ孫へは承継できず、想いは実現できないことになってしまいます。

5.について、
「成年後見制度」では後見人に「身上監護権」があるのですが、
「民事信託」ではこの身上監護権はありません。
ただし、家族が受託者になっていればクリアできる場合があります。
以上、代表的なものをみてきましたが、こと「相続」の観点から
1点見逃してはならないのが・・・

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● 「遺留分」を侵害していないか?!
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「民事信託」をすると、その財産は「委託者」(大家さんご本人)の
固有の財産から離なれて「信託財産」となります。
「信託契約」が終了すると遺った財産の受取人を指定することもできるのです。
それゆえ、相続時に「遺留分」を侵害してしまうことのないように信託契約の内容を
精査して行うことが肝要になります。
特に、大家さんの場合は「不動産の評価」をある程度厳密に行うことが必要です。

「民事信託」に関心、興味のある大家さんは、
税や法律面だけでなく不動産の評価も適正にできる大家さんの道しるべに
お声がけください。

皆さまの将来がよりよくなるお手伝いができれば幸いです。

ABOUT ME
津曲巖
相続・事業継承・資産形成、運用コンサルティング専門の エムエスエフピー株式会社所属 03-6403-4117  大手不動産会社にて不動産の有効活用、相続対策、 資産形成コンサルティングを数多く手がける。 外資系金融機関にスカウトされ不動産と金融のプロとして活躍後、 総合的コンサルティングを手がけるため、 2002年FP会社を設立して独立。 相続資産コンサルタントとして相談、相続対策の実行支援業務、 セミナー研修講師として全国で活躍中。 プロフィールの続きはこちら、http://ms-oya.or.jp/profile06/
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