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【第341回】弁護士 関 義之が斬る!     「令和3年改正民法・改正不動産登記法等(相続に影響する部分)について」 その4

●「令和3年改正民法・改正不動産登記法等(相続に影響する部分)について」

こんにちは。弁護士の関です。

今月は「令和3年改正民法・改正不動産登記法等(相続に影響する部分)について」
を書いていきます。

●既存の財産管理制度の見直し

今回の民法の改正では、財産管理制度の見直しがなされ、
新たに、所有者不明土地や所有者不明建物の管理制度等が新設されましたが、
既存の財産管理制度の見直しもなされています。
相続に関連する見直しとして、既存の財産管理制度の見直しについて説明します。
その他の民法の改正事項については、前掲の法務省のウエブサイトをご覧ください。

●相続財産の保全のための相続財産管理制度の見直し

現行民法では、相続財産が相続人によって管理されないケースに対応するために、
相続の段階ごとに、家庭裁判所が、「相続財産の管理人」(相続財産管理人)を
選任するなどの相続財産の保存に必要な処分をすることができる
仕組みが設けられています(現行民法918条2項、926条2項、940条2項)。
今回の民法改正では、相続が開始すれば、相続の段階にかかわらず、
いつでも、家庭裁判所が、相続財産管理人の選任その他の相続財産の保存に
必要な処分をすることができるとの包括的な規定が設けられました
(改正民法897条の2第1項)。
これにより、共同相続人が単純承認をしたが
遺産分割が未了のケースや、相続人のあることが明らかではないケースなど、
現行民法では対応できなかったケースでも、
相続財産の保存に必要な処分をすることが可能となりました。
また、段階が異なっても、相続財産の管理を継続的に実施することが
できるようになりました。
また、細かいですが、家事事件手続法の改正では、
相続財産管理人は、相続財産の管理、
処分その他の事由により金銭が生じたときは、
相続人に引き渡すことが難しい場合などにその金銭を供託することができるようになり
(改正家事事件手続法190条の2第2項、146条の2第1項)、
相続財産管理人の職務を終了させやすくしました。
これらの改正は、令和5年4月1日に施行されます。

●相続人不存在の相続財産の清算手続の見直し

現行の民法では、前述の相続財産の保存に必要な処分として選任される
「相続財産の管理人」(現行民法918条3項)の呼称は、
数人の相続人が限定承認をした場合に選任される者
(同法936条1項)や相続人のあることが明らかでない場合(相続人不存在)に
選任される者(同法952条1項)にも同じく使われています。
しかし、これらの者は、単に相続財産の維持等の管理を行うのみではなく、
清算を行うことをその職務としていることから、
改正民法では、「相続財産の清算人」の呼称が使われるようになり
(改正民法936条1項、952条1項)、
「相続財産の管理人」とは区別されるようになりました。
また、現行の民法では、
相続人不存在の場合の相続財産の清算手続については、
相続財産管理人の選任の公告、相続債権者らに対する公告、
相続人の捜索の公告と3回の公告を、それぞれ順番に行わなければならず、
最低10か月の期間を要していました
(現行民法952条2項、957条1項、958条)。
今回の民法改正では、相続財産清算人の選任の公告と
相続人の捜索の公告を統合して1つの公告で同時に行うことができるようになり、
また、平行して相続債権者らに対する公告も行うことができ、
公告は2回、期間も最低6か月で足りるようになりました
(改正民法952条2項、957条1項)。
これらの改正は、令和5年4月1日に施行されます。
ただし、施行日前に相続人不存在の相続財産管理人が選任されている事件については、
公告手続等は改正前の民法が適用になります(改正法附則4条4項)。

●相続放棄をした者の管理義務の明確化

現行民法では、相続放棄をした者は、「その放棄によって相続人となった者が
相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、
その財産の管理を継続しなければならない」と定められ(現行民法940条1項)、
管理継続義務を負いますが、その義務内容が明確ではありませんでした。
そこで、今回の改正では、
(1)「その放棄の時に相続財産に属する財産を現に占有しているとき」に、
(2)「相続人又は改正民法952条1項(相続人不存在)の
相続財産清算人等に対して当該財産を引き渡すまでの間」、
自己の財産におけるのと同一の注意をもって、
その財産を(3)「保存」しなければならないとされました(改正民法940条1項)。
これにより(1)放棄の申述時に現に占有している相続財産に限って、(3)保存だけをすればよく、
(2)相続人等に当該財産を引き渡せばその管理義務も終了することが明確になりました。
なお、相続人が受領を拒んだり、相続人全員が相続放棄をし
その後相続財産清算人が選任されていないケースでは、
金銭を供託(現行民法494条)したり、競売に付した上でその代金を供託
(同法497条)することにより、管理義務を終了させることもできます。
民法940条の改正は、令和5年4月1日に施行されます。

ABOUT ME
関 義之
「関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士」 平成10年 3月に早稲田大学法学部を卒業し、 その年の10月に司法試験に合格。 1年半の司法修習を経て、平成12年10月から弁護士登録。 平成23年10月から中小企業診断士にも登録。 法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、 代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、 契約書の作成・チェック等、 紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。 不動産の賃貸・売買や、 遺言・遺産分割・遺留分など相続に関する相談を、 幅広く受けている。 特に力を入れている分野は、中小企業の事業承継支援。 セミナー経験多数。 詳しくはWebサイト参照  https://seki-partners.com/
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