渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第142回
令和5年12月22日に閣議決定された、
令和6年度税制改正大綱から、大家さんに影響がありそうな税制改正を、
ピックアップして解説していきます。
税制によって大家さんの経営に大きな影響が与えられます。
どんな改正がされるのか。
どのような対応をすればよいのか。
一緒に考えていきましょう。
なお、税制改正は、まだ正式に決定されておりませので、
ご注意ください(例年3月の国会承認で決定)。
今回は、改正のうち住宅関連税制を中心に解説していきます。
●住宅ローン控除
令和6年限りの措置として、
子育て世帯及び若者夫婦世帯
(子育て特例対象個人※)における借入限度額について、
新築等の認定住宅については 500 万円、
新築等のZEH水準省エネ住宅・省エネ基準適合住宅については
1,000万円の借入限度額の上乗せ措置を講ずる。
※《子育て特例対象個人》
・年齢40歳未満で配偶者を有する者
・年齢40歳以上であるが、40歳未満の配偶者を有する者
・年齢が40歳以上であるが、年齢19歳未満の扶養親族を有する者
●子育て対応改修工事の税額控除
・子育て特例対象個人が
一定の子育て対応改修工事をして令和6年4月1日から12月31日までの間に居住した場合、
標準的な工事費用相当額(250万円を限度)の
10%に相当する金額を所得税額から控除できる
・上記の税額控除は、その年分の
合計所得金額が2,000万円を超える場合には適用しない
●直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税措置
・令和8年12月31日まで3年間延長する
非課税枠が1,000万円(一般住宅は500万円)となる
省エネ住宅の要件を省エネ性能が断熱等性能等級5以上かつ
一次エネルギー消費量等級6以上(現行:断熱等性能等級4以上又は
一次エネルギー消費量等級4以上)であることとする。
●その他延長項目
(1)印紙税
不動産の譲渡に関する契約書に係る印紙税の税率の特例措置の適用期限を
令和9年3月31日まで3年延長する。
(2)固定資産税
・新築住宅の建物について3年間
(マンション等の場合5年間)の固定資産税が1/2となる特例を、
一定の住宅を除き、令和8年3月31日まで2年延長する。
・認定長期優良住宅の建物について5年間
(マンション等の場合7年間)の固定資産税が1/2となる特例を
令和8年3月31日まで2年延長する。
(3)不動産取得税
不動産取得税の課税される宅地を1/2とする特例措置、
住宅及び土地の税率を4%から3%とする特例措置を、
それぞれ令和9年3月31日まで3年間延長する。
(4)登録免許税
下記登記による軽減税率を、令和9年3月31日まで3年間延長する。
・居住用家屋の所有権の保存登記 0.15%(本則0.4%)
・居住用家屋の所有権移転登記 0.3%(本則2%)
・住宅取得資金の抵当権設定登記 0.1%(本則0.4%)
・特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等に対する登録免許税の軽減措置を
令和9年3月31日まで3年延長する。
・特定低炭素住宅の所有権の保存登記等に対する
登録免許税の軽減措置を令和9年3月31日まで3年延長する。
(4)所得税・住民税
・居住用財産の買い換え特例の適用期限を令和7年12月31日まで2年延長する。
・居住用財産の譲渡損失の特例の適用期限を令和7年12月31日まで2年延長する。
・既存住宅の耐震改修をした場合の所得税額の特別控除の適用期限を令和7年12月31日まで2年延長する。
・既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除
適用対象者の合計所得金額要件を2,000万円以下
(現行:3,000万円以下)に引き下げた上、
適用期限を令和7年12月31日まで2年延長する。
また、対象となるエアコンの省エネ基準達成率を変更する。
・認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除
適用対象者の合計所得金額要件を2,000万円以下(現行:3,000万円以下)に引き下げた上、適用期限を令和7年12月31日まで2年延長する。
(5)贈与税
特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の
相続時精算課税制度の特例(親の年齢が60歳未満でも適用できる)の
適用期限を令和8年12月31日まで3年延長する。
〇大家さんへの影響と対応策
上記の改正(印紙税・固定資産税・不動産取得税を除く)は、
自宅における優遇措置なので大家さんには直接影響はありませんが、
賃貸している入居者が自宅を購入するかどうかの動きは影響してきます。
気になるのは、優遇される家屋が一定の断熱性能等級を
満たしているものが対象になっています。
建築費が高騰している中で、
断熱性を求めることでさらに建築費が上がります。
2025年4月から着工するすべての新築住宅・非住宅に対し、
省エネ基準適合が義務化されます。
建築コストがますます上がっていくことが懸念されます。
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