渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第163回
今回から相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
相続税の申告期限は、相続開始から10か月と聞きました。
相続人の遺産分割協議が揉めていてまとまっていなくても相続税は払うのでしょうか?
A
1. 遺産分割協議がまとまっていなくても相続税は払うの?
「遺産分割が決まるまでは、相続税は払わなくてよい」ということにはなりません。
遺産分割が決まっても、決まらなくても、
相続開始から10カ月以内に相続税を払うことになります。
この場合には、未分割での申告となり、
法定相続分で相続したものと仮定して相続税の計算をすることになります。
相続人が配偶者と子3人であれば、配偶者1/2、
子がそれぞれ1/6ずつが取得割合です。
民法上の法定相続分で取得したものとして計算することになります。
相続税の計算は、法定相続分で分けたものと仮定して相続税の総額を計算し、
それぞれ実際に取得した割合で、相続税を払うことになります。
相続税の総額だけを考えれば、分割しても、
未分割でも変わらないことになります。
2.未分割での申告では相続税が上がる場合
しかし、未分割の申告の場合には、
相続税が大幅に上がる可能性があります。
それは、「配偶者の税額軽減」、
「小規模宅地の減額」などの特例が使えないためです。
配偶者の税額軽減とは、配偶者に相続した分は、
最低1億6,000万円まで相続税がかからない特例です。
この特例は、未分割では適用できないのです。
また、小規模宅地の減額とは、相続税の計算上、
被相続人が所有していた宅地について、事業用、
居住用、賃貸用のいずれかに利用していた場合で、
一定の要件を満たすときは、土地の評価を80%(賃貸用は50%)減額できる特例です。
こちらも未分割では適用できません。
いずれも大きな減額の特例になるので、
この特例が使えないと大幅に相続税が上がることになります。
この場合には、これらの特例の適用がない状態、
つまり高い相続税を一旦納税し、
その後分割されたときに特例を受けて、
払い過ぎた相続税を還付してもらうという手続きになります。
具体的には、相続税の申告書に
「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付して提出しておき、
相続税の申告期限から3年以内に分割された場合には、
特例の適用を受けることができます。
なお、調停や裁判になって申告期限後3年以内に遺産分割ができないような場合には、
申告期限後3年を経過する日の翌日から2か月を経過する日までに、
「遺産が未分割であることについてやむを得ない事由がある旨の承認申請書」を提出し、
その申請につき所轄税務署長の承認を受けた場合には、
判決の確定の日など一定の日の翌日から4か月以内に分割されたときに、
これらの特例の適用を受けることができます。
いずれにしても申告期限内に遺産分割がまとまらないと、
結果的に相続税でも損をしてしまう可能性があるということになります。
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