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【第384回】弁護士 関 義之が斬る!     「相続土地国庫帰属法について」 その3

●「相続土地国庫帰属法について」

こんにちは。弁護士の関です。

今月は「「相続土地国庫帰属法について」
を書いていきます。

●相続土地国庫帰属制度の申請手続

今回は、相続土地国庫帰属制度の承認申請ができる人
(承認申請権者)について説明します。
相続土地国庫帰属法(以下「法」といいます。)では、
承認申請ができるのは、「土地の所有者
(相続等によりその土地の所有権の全部又は一部を取得した者に限る。)」
とされています(法第2条第1項)。
このうち、「相続等」については、
「相続又は遺贈(相続人に対する遺贈に限る。)」
(法第1条)と定義されています。
なんだか分かりにくいですが、まとめると、

1.「相続」又は「遺贈」
(ただし、遺贈は、相続人に対するものに限られる)により、
2. 土地の所有権の「全部」又は「一部」を取得した者
が承認申請権者になります。

1.「相続」又は「遺贈」
(ただし、遺贈は、相続人に対するものに限られる)により

「相続」の場合、相続人が一人であるケース、
遺産分割により取得したケース、いわゆる「相続させる遺言」により取得したケース、
いずれも要件を満たします。
一方で、「遺贈」の場合には、受遺者は、遺贈の放棄をせずに、
自らの意思でその土地を取得したことになりますので、
後から、やっぱりいらないとして、この制度によりその土地を手放すことはできません。
ただし、「相続人」が受遺者になる場合には例外的にこの制度を申請することが
可能とされています。
もっとも、「相続人」であっても、
相続放棄をした上で、遺贈の承認をした者は、
この制度を利用することができませんのでご注意ください。

また、「相続」又は「遺贈」は、法の施行日
(令和5年4月27日)の前か後かは問いません。

2.土地の所有権の「全部」又は「一部」を取得した者

「一部」とありますので、
相続又は遺贈により共有持分を取得した者も申請することが可能です。
ただし、申請する際に、その土地が数人の共有になっている場合には、
共有者の全員が共同して申請をしなければなりません。
共有者の一人が自己の持分だけ手放すことはできません。
また、共有者の一人が、その共有持分の全部を、
「相続」又は「遺贈」以外の原因(例えば、売買)により取得していたとしても、
他の共有者が要件を満たすのであれば、共同して申請することが可能とされています。
つまり、共有の場合には、売買により共有持分を取得した人がいたり、
それが法人であったとしても、この制度の申請が可能となる場合があるということです。

●具体例

法務省の下記ウエブサイトに申請が可能とされる具体例が掲載されていますので、
これを参考にいくつかご紹介します。
「相続土地国庫帰属制度の概要」(2 申請ができる人)
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html#mokuji2

<現在、土地をAが単独で所有している場合>
1.相続又は遺贈により所有権の「全部」を取得した場合
父X(単独所有)→(相続又は遺贈)→子A(単独所有)
★子Aは申請が可能。

2.相続又は遺贈により所有権の「一部」を取得した場合
・父X(単独所有)→(売買)→子A、子B(持分1/2ずつの共有)
・その後、子B(持分1/2)→(相続又は遺贈)→子A(持分1/2)
・その結果、子Aが、合計して、単独所有
★子Aは申請が可能。

<現在、土地をAが他の人と共同で所有している場合>
1.相続又は遺贈により共有持分の「全部」を取得した場合
父X(単独所有)→(相続又は遺贈)→子A、子B(持分1/2ずつの共有)
★子Aも子Bも要件を満たす。申請は共同。

2.相続又は遺贈により共有持分の「一部」を取得した場合
・第三者Y(単独所有)→(売買)→父X、子A(持分1/2ずつの共有)
・その後、父X(持分1/2)→(相続又は遺贈)→子A、子B(持分1/4ずつの共有)
・その結果、子Aが持分3/4、子Bが持分1/4の共有
★子Aも子Bも要件を満たす(子Aは一部)。申請は共同。

3.相続又は遺贈以外の原因により共有持分の「全部」を取得した共有者がいる場合
・第三者Y(単独所有)→(売買)→父X、法人Z(持分1/2ずつの共有)
・その後、父X(持分1/2)→(相続又は遺贈)→子A(持分1/2)
・その結果、子Aが持分1/2、法人Zが持分1/2の共有
★子Aは要件を満たす。法人Zは要件を満たさないが、Aと共同で申請が可能。

ABOUT ME
関 義之
「関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士」 平成10年 3月に早稲田大学法学部を卒業し、 その年の10月に司法試験に合格。 1年半の司法修習を経て、平成12年10月から弁護士登録。 平成23年10月から中小企業診断士にも登録。 法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、 代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、 契約書の作成・チェック等、 紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。 不動産の賃貸・売買や、 遺言・遺産分割・遺留分など相続に関する相談を、 幅広く受けている。 特に力を入れている分野は、中小企業の事業承継支援。 セミナー経験多数。 詳しくはWebサイト参照  https://seki-partners.com/
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