渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第201回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q 相続人間で葬式費用は誰が負担するかで揉めています。法律上は誰が負担するべきと規定されているのでしょうか?
A
葬式費用は相続後に発生するものであるため、
遺産(マイナスの資産)ではありません。
しかし、税務上は特別に配慮されており、
相続税の計算において遺産から控除できると規定されています。
このような葬式費用は法律上誰が負担するべきで、
遺産から支出してもよいものなのでしょうか?
1.裁判例の見解
民法には葬儀費用の負担者について明文規定はありません。
誰が負担すべきかについては裁判例や学説で見解が分かれています。
主な見解としては次のものがあります。
・喪主(葬儀の主催者)が負担すべき
・法定相続人全員で負担すべき
・相続財産(遺産)から支出すべき
・慣習や条理によって決めるべき
近年の有力な裁判例として
名古屋高等裁判所平成24年3月29日判決があります
◯通夜・告別式など追悼儀式に要する費用
その儀式の主宰者
(喪主や施主など、自己の責任と計算で葬儀を執行した者)が負担する。
言い換えれば、葬儀を実際に取り仕切った人が、
その式典関連費用を支払うのが筋だということです。
◯遺体の火葬・埋葬・納骨などに要する費用
故人の祭祀承継者
(墓や仏壇など祭祀財産を承継し、葬祭を主宰する者)が
負担する。
祭祀承継者は民法897条に基づき故人が指定することもでき、
指定がなければ慣習や親族の話し合いで決まります。
この判決は現在の実務感覚に
合致するものとして広く支持されています。
2. 葬式費用の負担を遺言書で定めた場合
遺言書で「○○が葬儀費用を負担する」
「遺産から葬儀費用を支出する」
といった指定がなされることもありますが、
このような指示は法的な遺言事項に含まれず、
原則として強制力を持ちません。
遺族への要請(付言事項)としての意味合いが強いとされています。
葬儀費用は死後に発生する支出であり、
被相続人の財産そのものではないためです。
3.遺産から支出することは可能か?
実務上は、遺産分割協議の場で葬儀費用についても併せて話し合い、
負担方法を決めることが適切とされています。
相続人全員が
「葬儀代は遺産から○○円出し、残りを各自負担しよう」
と合意すれば、
その内容に従って費用を分担できます。
2019年7月の民法改正により、
遺産分割前でも相続人が単独で一定額の預貯金を引き出せる制度が創設されました。
各金融機関ごとに相続人1人当たり150万円まで
(または預金残高の1/3に法定相続分を乗じた額のいずれか低い方)
の払戻しが可能になり、喪主などが自己負担で立て替えなくても
故人の口座から葬儀費用を捻出しやすくなりました。
ただし、引き出した預金は最終的には遺産の一部として扱われるため、
他の相続人に対して使途を説明し、精算する必要があります。
4.まとめ
葬式費用の負担については、
法律上は喪主や祭祀承継者が
中心的な負担者となるのが原則ですが、
実際には遺産分割協議で話し合いをするケースが多いです。
相続人間で十分に話し合い、円満に解決することが望ましいでしょう。
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