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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第365回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!④

マンション管理と住宅診断

皆様こんにちは。
不動産鑑定士住宅診断士の皆川聡です。

前回は、マンション管理において、
住宅診断の結果をもとにした計画的な修繕や改修は、
快適な住環境の維持とともに、
物件の価値を維持するための重要な手段であるということで、
住宅診断の活用が必須であることをお伝えさせいただきました。

今回は、マンション管理において、
住宅診断を、さらに強く推奨する理由を、
マンション管理の実態より、記載させていただきます。

皆さまは、そもそも、マンション管理会社が住宅診断をやった上で、
中長期修繕計画を作成しているのだろうから、
特段問題にしなくて良いのでは?と思われるかもしれません。

しかし、現実的には、マンション管理会社は、
国交省ガイドライン等の基準に基づき、
中長期修繕計画を策定しているに過ぎず、
しっかりとした住宅(建物)診断を行なった上で
行っているところは少ないと言えます。

その理由として、そもそもマンション管理会社は、
多数の建物を管理しているため、個々の建物ごとに、
その劣化状況等の把握のために詳細に住宅診断を行う時間の確保ができず、
それよりも、日々のクレーム対応に追われているといったところが、
現実と言えます。

ですので、個々の建物をしっかり見ている余裕がありませんし、
そもそも、「マンション管理会社の担当者の殆どが、
しっかりとした住宅診断的な視点までは持ち合わせてはいない」と
いうことが実情です。

直近だけでも、以下2つの例がありますので、お伝えします。

1.ルールを徹底した誠実な清掃員による、消毒剤の混入による劣化進行
昨今コロナ等に対する殺菌等の目的で、
建物内部において消毒剤が頻繁に使用されています。
その消毒剤をいつも誠実にしっかりとした清掃員の方が、
鉄骨の外階段にまで、その消毒剤を混ぜてモップ掛けをしていました。
それがために、
鉄骨の外階段の発錆と長尺シートの目地部分の隙間の劣化が急激なスピードで進行し、
酷い状態にしてしまった、という事実がありました。
その修繕費用は、管理会社に帰責事由があると思われます。

2.大規模修繕による収入源欲しさに、緊急修繕を行わない管理会社
先日不動産鑑定評価を行った築10年に満たない鉄筋コンクリート造の建物の調査の際に、
屋上の笠木や外壁のコーキング等の劣化が見つかりました。

そこで、その劣化状況について、依頼者を通じて管理会社へ、
一般的な築12~15年の大規模修繕のタイミングではなく、
緊急的な部分修繕の提案をしました。
(不動産鑑定評価書とは別に)

それに対する管理会社の回答は、
「数年間はこのまま使用し、
その後大規模修繕の段階で、まとめて修繕を行います。」
でした。

ということは、その大規模修繕を行うまでの数年間、
当該建物は雨水の浸入を野放しにし、その放置期間、
建物の劣化の進行をより進めることを、管理会社は推奨していることになります。

その管理会社側の理由としては、
大規模修繕の大きな収入源欲しさと考えられます。
例えば、
(1)築12年で大規模修繕工事を行った場合と、
(2)緊急的な部分修繕を行い、築18年の段階で、
大規模修繕工事を行う場合によって、
築36年の段階(12年×3回、18年×2回)では、
1回分の大規模修繕工事による収入が減ってしまいます。

このように、本当の意味で、
ご依頼者視点に立っていないマンション管理会社側の提案が、
多く見受けられます。

その理由としては、マンション管理会社の仕事の内容等が多岐に渡り、
マンション管理会社の業務も煩雑になり、ルール前提で動かないと業務が回らない、
本質に目が届かない傾向が強いからだ(個々に対応するとさらに煩雑)と思われます。

また、上記は賃貸物件でしたが、分譲マンションの場合には、
その管理組合が実質的に機能していないことが多く、
各住人の方も、管理費及び修繕積立金を支払っていることを理由に
できる限り関わらないようにしていることも、理由の一つと考えられます。

以上のことから、マンション管理において、管理会社に依存しない体制、
第三者的な視点である住宅診断士(ホームインスペクター)の
活用が必須であることを強く推奨いたします。

今回も最後までお読みだきましてありがとうございました。

皆さまの不動産投資がさらによろしい方向へ進んでいただきますよう
心よりお祈り申し上げます。
以上

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
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