令和4年6月7日東京地裁判決
『一括譲渡土地建物、固定資産税評価額按分ではなく、
鑑定評価額で按分』の補足
皆様こんにちは。
不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
前回は、「一括譲渡土地建物、固定資産税評価額按分ではなく、
鑑定評価額で按分」という令和4年6月7日の東京地裁の判決について、
お伝えさせていただきました。
今回は、その補足で、
住宅診断を反映した鑑定評価を行っている立場から、
理想的な鑑定評価についての考えと、
私のこだわりポイントについてお伝え致します。
本来不動産鑑定評価は、住宅診断や建物診断等を活用することによって、
その建物の機能や性質等の実質的な調査により定性的な分析を行った上で、
金額に落とし込む定量的な分析を行うのが、
理想的な不動産の鑑定評価と言えます。
そのためには、建物の構造上の特徴をふまえ、
躯体・仕上・設備等の機能に応じた経済価値の把握、
また、新築時施工の質、大規模改修時に施工の良否等も含め、
その後の劣化状況等の確認を行って、
建物を適正に評価することが、
低炭素社会やSDGsと言われている昨今において、
本当の意味で必要とされる不動産鑑定評価と言えます。
また、法定耐用年数は、あくまで「減価償却年数」です。
毎期の期間損益計算の適正化や恣意性排除を目的とした年数です。
高度成長時代の土地神話であった
「スクラップアンドビルド」の時代であれば、
「減価償却年数」を法定耐用年数としても、
一定程度、経済的な残存耐用年数の基になる数値の部分も
あったかもしれません。
しかし、リノベーション物件も増えている昨今において、
そもそもの建物の施工の質や修繕の状況の有無及びその施工の良否等で、
それぞれの建物はより個別性が強くなっており、
建物に応じた物的な劣化状況の調査、施工の良否や、
地盤の良否などの調査、分析、把握を行うことは欠かせません。
また、不動産の鑑定評価は、
不動産の経済価値の提示だけではなく、
今後の建物に関する「維持管理のコツ」や
「どの部分の劣化が激しいか」など、
早期に修繕すべき箇所の指摘により、
建物の物的な耐用年数の延長が図れるよう、
ご提案すべきと考えます。
ですので、弊社では、建物調査にご一緒していただく場合には、
「定期的な点検のポイント」もお伝えし、
建物と関わっていかれるお客様にとっての必須なご提案なども、
いろいろな角度からさせていただいております。
特に大規模改修工事などを行った不動産に係る鑑定評価は、
ご好評をいただいております。
ご依頼目的には、
金融機関からの実質的な経済的残存耐用年数等での
融資期間にも影響を与える担保評価や、
遺産分割時や財産分与の鑑定評価、
建物の良否を判定した賃料増減額交渉、
建物の適正な評価、国税庁への鑑定評価(担税力の検証)などです。
本当の意味での「建物評価」を感じていただきますと幸いです。
この度も最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
皆々様の不動産投資の御発展と御健勝を心よりお祈り申し上げます。