渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第214回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q父の相続がありました。
母の相続(二次相続)に向けて準備しておくべきことはありますか?
A
1.二次相続とは
二次相続とは、最初の相続(一次相続)が発生した後、
その相続人が亡くなることで発生する次の相続のことです。
典型的な例では、父親が亡くなった後(一次相続)、
その後母親が亡くなった際(二次相続)の相続を言います。
多くの方が一次相続の対策に注力しがちですが、
実は二次相続の方が税負担が重くなることが多いのです。
その主な理由は以下の3点です。
(1)配偶者の税額軽減がない
一次相続では、配偶者が取得する財産について「配偶者の税額軽減」という特例があり、
1億6,000万円または法定相続分のいずれか多い金額まで相続税がかかりません。
しかし、二次相続では配偶者がいないため、
この大きな税額軽減が使えません。
(2)基礎控除が少なくなる
相続税の基礎控除は「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算されます。
二次相続では相続人が1人減るため、基礎控除が600万円少なくなります。
(3)法定相続分が増えることによる税率の上昇
相続税は超過累進税率を採用しており、
相続人1人あたりの法定相続分が増えると税率が上がる可能性があります。
例えば、一次相続で配偶者と子2人の場合、
子1人の法定相続分は4分の1ですが、
二次相続では2分の1になり、
より高い税率が適用される可能性があります。
2.一次相続の遺産分割協議の工夫
(1)配偶者に相続しすぎていないか
配偶者の税額軽減を使えば一次相続の税金をゼロにできるからといって、
配偶者に全財産を相続させることは得策ではありません。
例えば、相続財産1億5,000万円、相続人が配偶者と子2人の場合
配偶者が全額相続:一次相続0円、二次相続1,840万円 トータル1,840万円
配偶者が5,000万円相続:一次相続997万円、二次相続80万円 トータル1,077万円
となります。
シミュレーションをしてみると、
全体財産の約3割程度を配偶者に相続させることで、
トータルの税負担を抑えられることが多いです。
ただし、配偶者が既に固有の財産を持っている場合は、
その分も考慮する必要があります。
(2)配偶者居住権の設定
2020年4月から利用可能になった配偶者居住権は、
二次相続対策として有効です。
配偶者居住権は配偶者が亡くなると消滅し、
その時点で相続税がかからないため、実質的に相続税を節税できます。
例えば、自宅1億円の場合、配偶者居住権を4,650万円と評価し設定すると
一次相続:配偶者は居住権4,650万円を取得
二次相続:居住権は消滅し、相続財産に含まれない
これにより、二次相続の相続税を大幅に軽減できる可能性があります。
3.次の相続に向けてやるべきこと
(1)遺言書の作成
配偶者が認知症になるリスクを考えると、
元気なうちに遺言書を作成しておくことが重要です。
相続人が揉めないように、
遺言書で分け方を示すことは非常に重要です。
(2)生前贈与
年間110万円以下の贈与は非課税です。
ただし、相続開始前7年以内の贈与は相続財産に加算されるため、
孫への贈与や、子への相続時精算課税制度による
贈与を利用することも検討しましょう。
(3)生命保険や死亡退職金の準備
生命保険金と死亡退職金には、
それぞれ「500万円×法定相続人の数」の非課税枠があります。
特に小規模企業共済は加入年齢制限がないため、
高齢の配偶者でも加入でき、
掛金は全額所得控除になるメリットもあります。
(4)不要な財産の整理
二次相続までに、次世代に負担をかけない財産整理も重要です。
特に次のような財産は早めに整理を検討しましょう。
・共有になっている不動産:将来的に権利関係が複雑化する
・底地(借地権が設定されている土地):収益性が低く相続税評価が高い
・利用見込みのない不動産(山林など):管理負担だけが残る
これらの財産は、
生前に売却や交換などで整理しておくことで、
相続人の負担を軽減できます。
4.まとめ
二次相続対策は、
一次相続の段階から計画的に行うことが重要です。
二次相続までの期間が長いと見込まれれば、
一次相続で一旦、配偶者に相続させて、
配偶者の税額軽減を使って相続税を抑えて、
二次相続に向けた対策を進めることができます。
配偶者の年齢や健康状態、
保有財産などを総合的に考慮し、
税理士などの専門家と相談しながら、
対策を進めていきましょう。
《お知らせ》
1.セミナー
(1)横浜で外壁塗装の無料セミナー
『節税×外壁塗装×相続対策 今こそ攻めの外壁塗装へ
守りから攻めの外壁塗装セミナー』
大家さん専門税理士が自ら経験した外壁塗装に関する業者の選び方から
税務・節税のポイントをわかりやすく解説します。
日時:8月2日(土)10:00~12:00
場所:神奈川県民センター 1501号室
(横浜市神奈川区鶴屋町2-24-2)
費用:無料
申し込み: https://forms.gle/i5jdMV5AhAfCFrGJ6
2.横浜で無料相談会の開催
Knees bee税理士法人の横浜サテライトオフィスを6月から開設しました。
開設を記念して渡邊による無料税務相談会を開催します。
日時:8月5日(火)
場所:神奈川県横浜市西区北幸1-11-5
相鉄KSビル905 横浜駅9出口から徒歩3分
申し込み:https://timerex.net/s/e.fukuoka.sogo_7397/e36f28ec
3.税務調査解体新書の無料ダウンロード
AI賃料査定でおなじみのスマサテさんとの協同企画で
税務調査アンケートを実施した
結果を『税務調査解体新書』にまとめました。
アンケート結果だけではなく、税理士としてのコメントも多く掲載しています。
スマサテさんのホームページからダウンロードできます。
https://owner.sumasate.jp/lp
