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相続後に確定した債務は、相続財産から控除できる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第222回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q相続税の申告後に、被相続人の不法行為が発覚しました。
相続後に被相続人の損害賠償債務が確定した場合には、
相続人は相続税の債務控除をするために、更正の請求はできますか?

A
1.相続税の債務控除とは
相続税を計算する際、
被相続人が亡くなった時点で負っていた債務は、
相続財産から差し引くことができます。
これを「債務控除」といいます。

相続税法では、
「相続開始の際に現に存在し、かつ確実と認められる」
債務であることが控除の条件とされています。

ただし、債務の金額が相続開始時点ではっきりしていなくても、
その債務が確実に存在することが明らかであれば、
債務控除の対象になり得るという点です。

国税庁の質疑応答事例(交通自己の加害者が死亡した場合における
損害賠償金についての債務控除)でも、
「交通事故が被相続人の過失に基づくものであれば、
被相続人は加害者としての損害賠償の責任を負って死亡したことになり、
相続人はその責任を相続により承継するため、債務控除ができる」
という見解を示しています。

たとえば、裁判で争っている最中の損害賠償請求であっても、
被相続人に責任があることが明らかな場合は、
後から債務控除を適用できる可能性があります。

2.被相続人の過失に基づくものか
相続開始後に債務が確定していても、
被相続人が相続前に過失があれば
相続後に確定しても債務控除は可能と考えます。

ただし、過失があるかの証明は難しい問題です。
たとえば、被相続人が明らかに信号無視をしていた、
飲酒運転をしていた、速度超過が確認されているなど、
客観的な事実から被相続人の過失が推認できる場合は、
債務控除が認められる可能性が高くなります。

一方で、事故原因が不明確で、
目撃者もおらず、双方の主張が対立しているような場合は、
債務の「確実性」が認められにくくなります。

被相続人に法的責任がないことが明らかな場合、
その支払いは債務控除の対象になりません。
たとえば、被相続人の過失がゼロであることが確定しているにもかかわらず、
相続人が被害者への同情から見舞金を支払った場合、
これは法的債務の履行ではないため債務控除は認められません。

また、相続人独自の判断による支払いも同様です。
被相続人に法的責任がないにもかかわらず、
相続人が今後の関係性を考慮して任意に支払った金額は、
被相続人の債務とは認められない可能性があります。

3.相続人が証明できるか
したがって、債務控除を受けるためには、
相続人側で被相続人の法的責任を立証する必要があります。

最も有力な証拠は、裁判所の判決書や和解調書です。
これらの公的文書で被相続人の過失割合や賠償責任が明確に示されていれば、
債務控除の根拠として十分です。判決が確定していない段階でも、
訴状や答弁書、準備書面などの裁判資料から、
被相続人の過失が相当程度推認できる場合があります。

4.相続後に債務額が確定した場合の更正の請求
更正の請求とは、簡単に言えば
「納め過ぎた税金を返してもらう」ための手続きです。
被相続人の債務が後から確定したことで、
当初の相続税申告時の課税価格が過大だったことが判明した場合、
この手続きを使って税額の是正を求めることができるのです。

相続税法では、判決等が確定したことを知った日の翌日から
4か月以内に更正の請求を行わなければならないと定められています。

請求書には「○年○月○日の判決により、
被相続人○○の損害賠償債務△円が確定したため、
課税価格から当該債務を控除する」という趣旨を明確に記載し、
判決謄本や和解調書など、
債務額が確定したことを証明する書類を添付する必要があります。

5.まとめ
被相続人の損害賠償債務が相続後に確定した場合、
更正の請求により相続税の減額を受けることは可能です。
ただし、被相続人に法的責任がある債務であることが前提となるため、
法的責任があることの証明ができるか、
弁護士や税理士などの専門家に相談してみましょう。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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