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準確定申告の税金を長男が全額負担、これって大丈夫?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第238回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q被相続人の準確定申告の納税額を
相続人間の遺産分割協議で法定相続分以外で負担することができますか?

A
1.債務は遺産分割の対象にならない
まず押さえておきたいのは、
準確定申告による所得税は被相続人の「債務」であるという点です。

相続が発生すると、
被相続人の財産だけでなく債務も相続人に承継されます。

プラスの財産は遺産分割協議によって
「誰が何を取得するか」を自由に決めることができます。
一方、債務は遺産分割の対象にはなりません。
債務は相続開始と同時に、
法定相続分に応じて当然に各相続人へ分割承継されるためです。

国税通則法第5条第2項では、
相続人が2人以上いる場合の国税の承継について、次のように定めています。

「相続人が二人以上あるときは…国税の額を民法第900条から第902条まで
(法定相続分・代襲相続分・指定相続分)の
規定によるその相続分により按分して計算した額」を各相続人が承継する

つまり、被相続人に課されるべき所得税の納税義務は、
各相続人が法定相続分(または遺言で指定された相続分)に
応じて負担することが法律で定められているのです。

また、最高裁判所の判例(昭和34年6月19日)でも、
被相続人の金銭債務その他の可分債務は、
相続開始と同時に法定相続分に従って当然に各相続人に分割承継されるため、
遺産分割の対象とはならないと判断されています。

したがって、遺産分割協議で
「長男が準確定申告の所得税を全額負担する」と決めたとしても、
それは相続人間の内部的な取り決めにすぎません。
債権者である税務署に対しては主張できず、
各相続人は自らの法定相続分相当額について
納税義務を免れることはできないのです。

2.代償金や遺産配分による調整による対応
では、特定の相続人に税負担を集中させたい場合はどうすればよいのでしょうか。

実務上は、代償金の支払いや遺産配分による調整で対応します。

【具体例】
相続人が長男と長女の2名で、
準確定申告の所得税が100万円だったケースを考えてみましょう。
法定相続分は各2分の1ですので、本来は各自50万円ずつ負担することになります。
ここで「長男がすべて負担する」と決めたい場合、次のような方法で調整します。

方法①:代償金による調整
まず法定相続分どおり、長男・長女がそれぞれ50万円ずつ納付します。
そのうえで、長女から長男へ50万円を代償金として支払います。
これにより、実質的には長男が100万円全額を負担したのと同じ結果になります。

方法②:遺産配分による調整
遺産分割において、長女の取得分から50万円相当を減らし、
その分を長男の取得分に上乗せします。
たとえば、遺産総額が1,000万円であれば、
本来は各500万円ずつ取得するところを、
長男550万円・長女450万円とすることで、
長男が肩代わりした税負担分を遺産配分で調整するのです。

いずれの方法も、相続人間で適切に精算を行う限り、
贈与税の問題は生じません。

3.精算しないと贈与税リスクが発生する
肩代わりしたまま精算しないと贈与税が課される可能性があります。
先ほどの例で、長男が100万円全額を納付し、
長女から何の精算も受けなかった場合を考えてみましょう。

長女は本来負担すべき50万円の納税義務を免れたことになります。
これは長女にとって50万円の経済的利益を得たことを意味します。
税法上、他者に債務を肩代わりしてもらい返済を免れた利益は、
その者への贈与とみなされます。
つまり、長女は長男から50万円の贈与を受けたと解釈されるのです。

贈与税には年間110万円の基礎控除がありますので、
この例では基礎控除内に収まり、実際に贈与税が課されることはありません。

しかし、肩代わり額が大きい場合や、
同じ年に他の贈与も受けている場合には、
110万円を超える部分について贈与税の申告・納税が必要になります。

また、親子間など扶養義務者による生活費や療養費の負担については
贈与税が非課税とされる規定がありますが(相続税法第21条の3)、
兄弟姉妹間での税負担の肩代わりは通常この非課税規定の適用外となりますので、
原則どおり贈与と判断されます。

4.まとめ
準確定申告の所得税負担について整理すると、次のとおりです。
債務は遺産分割の対象にならないため、
遺産分割協議で法定相続分と異なる負担割合を定めることは、法的・税務的には認められません。

特定の相続人に負担を集中させたい場合は、
代償金の支払いや遺産配分での調整によって実質的に対応することが可能です。
「みなし贈与」として贈与税が課されないように調整することがポイントです。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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