渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第258回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
父は、叔父と2分の1ずつ共有している
5階建ての1棟マンションを持っていました
(土地建物とも共有・区分登記なし)。
1階が父の自宅、2階は叔父の自宅で父が無償で使わせており
(使用貸借)、3〜5階は賃貸に出しています。
父の相続で、1階の自宅敷地について小規模宅地の特例
(特定居住用宅地等)を使いたいのですが、
要件を満たす母や私(同居の長男)が相続すれば、
1階の敷地はまるまる80%減額できると考えてよいのでしょうか?
A
1.小規模宅地の減額とは
被相続人の自宅の敷地は、
一定の要件を満たす人が相続すれば、
330㎡まで評価額を80%減額できます(賃貸用は200㎡まで50%)。
取得できる人は、
①配偶者、②同居の親族、③家なき子(①②がいない場合の別居親族)
に限られます。
ご質問のように「1階は父の自宅」「父は建物の半分を持っている」「
要件を満たす人が相続する」となると、
1階の敷地はまるごと使えそうに思えます。
しかし共有のケースでは、
減額できる面積を二段階で按分する必要があるのです。
2.まず「父の居住用」がどこかを見極める
最初に、父の居住用の土地がどこかを整理します。
父が自宅として使っていたのは1階だけです。
2階は兄の自宅で、父が無償で使わせている使用貸借です。
使用貸借は「貸付事業」にあたらないため、
2階に対応する部分は、居住用でも貸付用でもなく、
小規模宅地の対象外です。
3〜5階の賃貸部分は、
父の持分について別枠で貸付事業用宅地等(200㎡まで50%)の対象になります。
3.第一段階 父の「持分の中」でさらに按分される
共有持分は、建物のどこか一部に貼り付いているのではなく、
土地全体に均等に及ぶ権利です。
国税庁の質疑応答事例も、
共有持分は居住用の敷地と賃貸用の敷地に均等に及ぶ、
としています。
ですから、1階に対応する土地のうち、
父のものは持分2分の1の分だけです。
仮に土地が200㎡、各階の床面積が同じ(各5分の1)とすると――
200㎡ × 1/5(1階分)× 1/2(父の持分)= 20㎡
これが父の居住用宅地です。
「1階は父の自宅なのだから、
1階の土地40㎡は全部父の居住用のはず」と
思いがちですが、40㎡のうち父のものは20㎡だけ。
残り20㎡は叔父のもので、父の相続財産にそもそも入っていません。
居住用の敷地を単純に共有持分だけで求めるわけではないのです。
4.第二段階 居住用部分は「取得した持分」だけが対象
次に、この居住用20㎡を、相続した人の取得割合で按分します。
特例の対象を「取得した持分の割合に応ずる部分に限られる」と明記しています。
父の相続人と取得割合を、
母2分の1・同居の長男4分の1・別居で持ち家ありの長女4分の1とすると――
母 20㎡×1/2=10㎡(適用OK)
長男 20㎡×1/4= 5㎡(適用OK)
長女 20㎡×1/4= 5㎡(消失)
要件を満たさない長女が取得した5㎡は、
特例の対象から外れて消えてしまいます。
これを母や長男へ振り替える取扱いはありません。
結局、80%減額できるのは15㎡だけ、というわけです。
5.まとめ
このように、要件を満たす人へ「自宅を寄せる」ことはできず、
減額できるのは取得割合の分だけです。
減額を最大化したいなら、
要件を満たす人の取得割合を厚くするしかありません。
相続が起きてからでは選択肢が限られますので、
分割協議の前に小規模宅地のシミュレーションを
しておくことをお勧めします。
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