渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第268回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
20台分の月極駐車場(200㎡・アスファルト舗装済み)を
10年以上前から運営しています。
このうち3台分は、
近くに住む息子に貸しています。
近隣の相場が1台あたり月1万5,000円ほどのところ、
月3,000円だけ受け取っています。
きちんと毎月お金をもらっているのですから、
20台分すべてが小規模宅地等の
特例の対象になると考えてよいのでしょうか?
A
息子さんに貸している3台分については、
対象にならない可能性が高いです。
小規模宅地等の特例の対象となる貸付けは、
「相当の対価を得て継続的に行うもの」に限られます。
月3,000円という水準は、
この「相当の対価」に届かないと判断されるおそれが大きいのです。
1.「有償なら足りる」ではない
特例の対象となる貸付事業とは、
不動産貸付業、駐車場業、
自転車駐車場業、そして準事業をいいます。
この準事業が、事業と称するに至らない
不動産の貸付けその他これに類する行為で、
相当の対価を得て継続的に行うものと定義されています
(租税特別措置法施行令40条の2)。
つまり、規模が小さくても特例は使えます。
しかし「相当の対価」という要件があるのです。
国税庁も、この特例の対象となる不動産の貸付けは
相当の対価を得て継続的に行うものに限られるため、
使用貸借により貸し付けられている
宅地等は特例の対象にならないと明示しています
(タックスアンサーNo.4124)。
無償はもちろん対象外です。
問題は、「いくらかもらっていれば有償なのか」ではなく、
「いくらからが相当の対価なのか」です。
2.固定資産税相当額では足りない――使用貸借との境目
固定資産税相当額程度しか受け取っていない場合、
それは貸付事業とはみられません。
使用貸借では、
借主が通常の必要費を負担する義務を負っています(民法595条1項)。
つまり、無償で借りている人であっても、
その物を使うために通常かかる費用は自分で
負担することが求められています。
固定資産税は、まさにこの通常の必要費に当たります。
ですから、固定資産税相当額程度の
お金が動いていても、
それは使用貸借の借主が当然に負担すべきものを
負担したにすぎず、
賃貸借の対価を払ったことにはならないのです。
では、固定資産税以上に
支払っていればよいかというと、
そうではありません。
租税特別措置法関係通達37-3は、
「事業に準ずるもの」の範囲について、
相当の対価かどうかを次のように判定するとしています。
その貸付けの用に供している資産の減価償却費の額、
固定資産税その他の必要経費を回収した後において、
なお相当の利益が生ずるような対価を得ているかどうか
この通達は買換え特例に関するものですが、
ほかの特例でも「事業に準ずるもの」の
判定はこの37-3の取扱いに準ずるとされており、
解釈の基準として広く参照されています。
平成10年4月の東京地裁判決では、
「地代収入はもちろん、その増額の見込み、
権利金等の授受の有無、
金額、その維持管理にかかる費用、
貸付けをした資産の減価償却費、
固定資産税その他の必要経費を総合的に判断して、
相当な対価を受領していて現実に利益をあげているか、
仮に利益を上げていないとした場合においても、
客観的にみて事業として利益を上げることを
志向していると認められるか否かといった
観点から判断すべきである。」としました。
駐車場に当てはめると、
回収すべき経費は次のようになります。
・固定資産税・都市計画税
・アスファルト舗装の減価償却費
・管理費、除草・補修などの維持費
これらを回収して、
(赤字になっていたとしても)利益を
残そうとしているかが問われるのです。
3.もう一つの軸――近隣相場との比較
経費を回収できていればそれでよい、
というわけでもありません。
もう一本、近隣相場という軸があります。
平成7年1月の国税不服審判所の裁決では、
賃貸料が1㎡あたり4,825円だったのに対し、
周辺地域では1㎡あたり13,447円や18,181円であったこと、
さらに同じ物件を第三者に貸している賃料と
比べても著しく低廉であることから、
相当の対価で賃貸されたとはいえないと判断されました。
注目したいのは、外部の相場だけでなく、
同じ物件のなかでの第三者向け賃料との
比較も持ち出されている点です。
4.まとめ
貸駐車場に小規模宅地等の特例を使うには、
相当の対価を得ていることが必要です。
相当の対価に当たるかどうかは、
最終的には事実認定の問題です。
判断が分かれる場面も多いので、
迷ったら、賃貸借契約書と収支の内訳を
整理したうえで専門家にご相談ください。
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