渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第269回
相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。
Q
月極駐車場(200㎡)を長年運営しています。
もともと全面を舗装するつもりでしたが、
費用がかさむため、
出入口の周りと通路にあたる100㎡ほどだけ
アスファルトを敷き、
残りは土がむき出しのままにしています。
小規模宅地等の特例は、
駐車場すべてが対象になると
考えてよいのでしょうか?
A
残念ながら、200㎡すべてとはいきません。
原則として、アスファルト舗装がされている
100㎡の部分だけが対象になります。
なお、舗装部分が駐車場全体に比べてあまりに小さいと、
その舗装部分についてすら特例が認められないことがあるのです。
1.構築物の敷地になっているか
小規模宅地等の特例の対象となる宅地等は、
建物又は構築物の敷地の用に供されているものに限られます
(租税特別措置法69条の4第1項)。
ここで見ているのは土地の状態です。
「駐車場として貸しているかどうか」ではなく、
「その部分が構築物の敷地になっているかどうか」を見ます。
ですから、一つの土地のなかに
構築物のある部分とない部分が混じっていれば、
その線に沿って扱いが分かれます。
舗装された100㎡は構築物の敷地、
土がむき出しの100㎡はそうではない
――そう区切られるわけです。
区画として貸していることも、
賃料を受け取っていることも、
関係ないのです。
貸付事業として成立しているかどうかと、
構築物の敷地かどうかは、別々に判定されるからです。
2.舗装が小さすぎると、その部分すら認められない
では、舗装部分だけは必ず特例を使えるのかというと、
そこにも落とし穴があります。
札幌地裁 平成21年1月29日判決の事案では、
駐車場約2,856㎡のうち、
アスファルト舗装されていたのは約228㎡。
全体の約8%にすぎませんでした。
ほかには金属製パイプを使ったフェンスがあった程度です。
裁判所は、全体の地積に比べて舗装部分が小さすぎ、
撤去等が容易であることなどから、
その土地全体が構築物の敷地とは認められないと判断しました。
この判決は、納税者が控訴しなかったため、
この内容で確定しています。
つまり、舗装部分の面積だけを取り出して特例を使う、
ということも認められなかったのです。
特例が守ろうとしているのは、
土地の上に築かれた事業の基盤です。
わずかに舗装があるだけで、
剥がせばすぐ更地に戻る状態では、
その基盤があるとはいえないと考えるのです。
3.「相当部分」に及んでいるか
では、どこまで舗装すれば安心なのでしょうか。
残念ながら、「何割以上なら大丈夫」という明確な基準は、
法令にも通達にも置かれていません。
判決が示したのは、約8%では足りないという事実です。
実務では、舗装が駐車場の相当部分に及んでいることが必要と考えられています。
裏を返せば、次のような状態は危ういということです。
・出入口や通路だけを舗装し、駐車区画そのものは土のまま
・一部の区画だけを舗装し、残りは手つかず
・舗装したものの、ひび割れや剥離が進み、地面が露出している
ご質問のケースは、200㎡のうち100㎡、
ちょうど半分が舗装されているので、
舗装部分についての適用は見込めるでしょう。
4. まとめ
生前の備えとしては、
駐車場の相当部分――
できれば全面に舗装が及んでいる状態にしておくこと、
そして舗装が傷んで地面が露出していないか、
を確認しておくことです。
どこまで舗装されていれば足りるかは、
明確な基準がなく、
実態にもとづく判断になります。
迷ったら、現地の状況と舗装の範囲が分かる
図面を整理したうえで専門家にご相談ください。



