東京の中心で税務を叫ぶ 第79回コラム
そもそもインボイスの緩和措置って何?
そもそもインボイスの緩和措置って何?
こんにちは!
今回は、令和5年度の税制改正にあげられたインボイスの緩和措置についてお話します。
インボイス登録すると、強制的に課税事業者(消費税の申告義務がある人)になります。
そうすると、店舗や事務所の家賃収入がある大家さんは、
家賃にかかる消費税を納税することになります。(住宅の家賃は非課税です。)
例えば、テナント家賃が110万円だったなら、
今までは110万円がそのまま収入になっていました。
インボイス登録すると、110万円のうち、100万円が収入となり、
10万円は税金として国に納めることになります。
10万円はもともと消費税分として受け取っていたとはいえ、
突然収入が10%減ってしまうことになります。
これでは、もともと収入の少ない事業者には影響が大きすぎるため、
税制改正で3年間だけは負担が軽くなる措置を設けました。
今回の改正の内容を簡単に求めると次のようになります。
「令和5年10月1日から令和8年9月30日の期間、
免税事業者が課税事業者に切り替えた場合、納税額を売上税額の2割とすることができる」
先ほどの例だと、10万円の消費税を受け取った場合には2万円の納税でよいということになります。
現行法でも、中小規模の事業者が利用できる簡易課税制度があります。
売上に係る消費税にみなし仕入率をかけた金額を仕入税額控除として計算します。
【簡易課税】
事業者が納める消費税=受け取った消費税 - 受け取った消費税 × みなし仕入率
(売上にかかる消費税) (売上にかかる消費税)
みなし仕入率は業種ごとによって90%~40%で設定されています。
大家さんなどの不動産業であれば、通常は40%(第六種事業)になります。
今回導入された緩和措置では、
納税額を売上税額の2割にできるとなっていますが、
これは簡易課税でいうところのみなし仕入率を80%にするのと同じ意味といえます。
【緩和措置】
事業者が納める消費税=受け取った消費税 - 受け取った消費税 × 80%
(売上にかかる消費税) (売上にかかる消費税)
緩和措置の対象となるのは、
免税事業者がインボイス登録して、
課税事業者になった場合です。
ただし、基準期間(個人の場合はその年の2年前、法人の場合は2期前の年度)の
課税売上が1,000万円を超える場合は対象になりません。
例えば、令和3年に不動産を売却して、
そのうち建物の売買代金が2,000万円だった場合、
建物の売買代金は課税売上であるため、
令和5年は緩和措置が受けられないことになります。
令和3年や令和4年に不動産を売却している方は、
結果的に適用できない可能性があるので事前に確認が必要です。
緩和措置の適用を受けるためには、
確定申告書に適用を受ける旨を付記するものとする、
となっているため、適用するかどうかの選択は確定申告時でよいと思われます。
また、簡易課税制度を適用していても選択は可能なため、
簡易課税制度と緩和措置の有利な方を選択できることになります。
また、あくまでも3年間だけの措置なので、その後は通常通り課税されます。
以前もお話しましたが、
インボイス登録して不動産の売却をした場合、
建物の売買代金に対する消費税を納税することになるので、
登録するかどうかは慎重にご検討ください。
まとめ
①緩和措置が適用されるのは3年間だけ
②緩和措置が適用されるのは、2年前の課税売上が1,000万円以下の年
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楽待 不動産住宅新聞でもコラム連載しています。