東京の中心で税務を叫ぶ 第129回コラム
新しい物件を購入すると譲渡税を減らせるってほんと?
新しい物件を購入すると譲渡税を減らせるってほんと?
についてお話します。
こんにちは!
今回は、物件売却時の譲渡税の圧縮方法についてお話します。
物件を売却して売却益が発生すると、譲渡税がかかります。
この譲渡税を減らすために、同じ年に、
あらたに物件を購入すると、
「事業用資産の買換え特例」を適用できる可能性があります。
例えば、賃貸ビルを2億円で売却した場合、
その取得費は1,000万円、譲渡費用はないものとすると、
(2億円-1,000万円)=1億9,000万円が売却益になります。
所有期間が5年超の長期譲渡に該当すると、
所得税・住民税で20.315%の税率になるため、
約3,860万円の税金が課税されます。
ところが、一定期間内に新たに賃貸ビルを2億円で購入すると、
1億9,000万円の売却益のうち80%である1億5,200万円が将来に繰り延べられ、
20%部分である3,800万円に対して課税されることになります。
所有期間が5年超の長期譲渡に該当すると約780万円の税金が課税されます。
つまり、3,800万円かかる税金が780万円に抑えられたことになります。
「事業用資産の買換え特例」は大きく税金を抑えられる制度ですが、
どんな場合でも利用できるわけではありません。
譲渡資産、買換資産それぞれに要件があります。
○譲渡資産(売却する不動産)の要件
・その年の1月1日時点で10年超所有していること
・相当の対価を得て継続的に賃貸している
・経常的に赤字になっている物件には適用できない
○買換え資産(購入する不動産)の要件
・土地の場合は面積が300平米以上
・事務所、工場、作業場、研究所、営業所、店舗、倉庫、
住宅その他これらに類する施設の敷地の用に供されるもの
(駐車場だけのものは対象外)
・譲渡した土地の5倍以内の面積(5倍を超える部分は対象外)
・原則は譲渡資産を譲渡した年とその前後の3年間に取得したもの
・取得した日から1年以内に事業に使うこと
また、この制度は税金を免除する制度ではありません。
先ほどの例で、買換資産である賃貸ビルは2億円で購入していますが、
この特例を使うことで、税務上の取得費は、
2億円-1億5,200万円(売却益の80%)=4,800万円になります。
将来、買換資産である賃貸ビルを売却するときには、
4,800万円の取得費を基準として考えるため、
取得費が小さくなり、将来の売却時に多額の売却益が出る可能性があります。
今年の売却時の税金を抑えられる一方で、
将来の売却時に課税を受けるという
「課税の繰り延べ」に過ぎないことに注意してください。
また、この特例を適用するためには、
300㎡以上の土地を購入する必要があるため、
立地のよい不動産に買い換えることができないかもしれません。
まとめ
①事業用資産の買換え特例を適用できれば、譲渡税を圧縮できます。
②税金の免除ではなく、繰り延べなので、将来に課税を受けることになります。
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楽待 不動産住宅新聞でもコラム連載しています。