東京の中心で税務を叫ぶ 第146回コラム
個人の決算書の特徴って何?②
こんにちは!
今回は、個人の貸借対照表に出てくる元入金についてお話します。
まず貸借対照表について簡単にご説明します。
事業的規模ある大家さんが、
65万円の青色申告特別控除を取るためには、
確定申告書に貸借対照表の添付が必要です。
法人と同様に、貸借対照表には、資産と負債を計上します。
ただし、あくまでも事業で使用している預金の残高、
賃貸不動産の帳簿価額、
アパートローンの残債などを計上する書類で、
プライベートな財産や債務は記載する必要はありません。
個人の貸借対照表の大きな特徴は、資本金が無いことです。
その代わりに似たようなものとして、元入金というものがあります。
資本金は、会社法の規定により、
1円以上の金額を計上することが義務づけられていますが、
個人の元入金の計上は任意です。
事業資金以外の個人のポケットマネーを事業のために使用すると、
元入金が増えていきます。
逆に、事業資金を個人的に引き出せば元入金は減ります。
また、利益が出たときは、法人の場合は、資本金とは別に、
純資産の利益剰余金に計上しました。
利益剰余金を見れば、過去の利益の累積額がすぐに分かります。
それに対して、個人の貸借対照表には、
利益剰余金はなく、その年の利益だけは別途表示されますが、
過去の利益はすべて元入金に吸収されてしまいます。
つまり、個人の貸借対照表を見ても、
ポケットマネーで出したお金と、過去の利益の累積額が区別できないことになります。
そのため、極端なことを言うと、
不動産賃貸事業の利益がずっとマイナスで、
赤字が積み上がっていても、
ポケットマネーを多額に事業資金として計上すれば、
元入金はいくらでも増やせることになります。
逆に、利益がたくさん積みあがっていても、
たまたま多額の資金を事業用の口座から引きだしてしまうと、
元入金はマイナスになり、債務超過のように見えてしまいます。
このように、元入金は、プライベートの資金を出し入れすることで、
容易にコントロールできるものなので、
不動産賃貸事業から発生した純粋な自己資本とは言えないと考えられます。
まとめ
①元入金=自己資本とは、一概には言えません。
②個人の財産全体での自己資本を把握するためには、
プライベートの財産、債務を含めて考える必要があります。
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楽待 不動産住宅新聞でもコラム連載しています。