東京の中心で税務を叫ぶ 第56回コラム
そもそも相続税対策のための借り入れって何?
こんにちは!
今回は、大家さんが頭を悩ませる「相続税対策」についてお話しします。
相続税対策についてこんな話は聞いたことありますか?
では、具体例を見てみましょう!
もともと土地を持っている方が借金をした場合
もともと3億円の土地を持っていた人が、
2億円の借金をした場合の相続税評価はどうなるでしょうか?
『3億円(土地)-2億円(借金)=1億円』→これは大間違いです。
上記のように考えて相続税評価が1億円になると思われる方がいらっしゃいますが、この考え方は誤りになります。
なぜなら、借金をしているということは、現金を受けとっているため、同時にその分の財産が増えていることになるからです。
正しくは
このように借金をした前と後では相続税評価は変わらず3億円ということになります。
では、なぜ借金をすると相続税が下がるという誤解が生まれるのでしょうか。
それは、「持っている現金を不動産に変えると相続税が下がる」というお話と混同しているからだと思います。
では、実際に不動産を取得すると相続税が下がるのか確認したいと思います。
1.土地の相続税評価
宅地の相続税評価額は、原則、路線価で評価されることになっています。
路線価は、公示価格(ほぼ時価に等しい価額)の80%程度に設定されています。
そこから、賃貸していることにより、貸家建付地となり、土地の評価額×(1-借地権割合×借家権割合)で計算されることになります。
借地権割合は、地域ごとに定められていて、借家権割合は、現時点では全国一律で30%とされています。
したがって、家屋を賃貸した場合の土地の評価額(借地権割合70%の場合)は、公示価格を100とした場合、63に下がります。
公示価格 | 更地価額(相続税評価額) | 相続税評価額貸付価額(相続税評価額) |
100 | 80 | 63 |
難しいですね。
要は「賃貸経営で使う土地は、何も使っていない土地よりも相続税の計算をするときに低く計算してくれる」ということになります。
2.建物の相続税評価
宅地の相続税評価額は、原則、路線価で評価されることになっています。
建物は、固定資産税評価額で評価されますが、賃貸することにより、貸家の評価になります。
固定資産税評価額は、一般的に建築費の40~70%程度(構造により異なります)と言われています。
また、貸家の評価は、固定資産税評価額×(1-借家権割合)で計算されます。
したがって、家屋を賃貸した場合の家屋の評価額(固定資産税評価額が建築費の70%の場合)は、建築費を100とした場合、49に下がります。
建築費 | 自用家屋(相続税評価額) | 貸家の評価(相続税評価額) |
100 | 70 | 49 |
要は「賃貸経営のための家は、自分で使っている家よりも相続税の計算をするときに低く計算してくれる」ということになります。
このように、所有している土地にアパートなどの賃貸物件を建築すると、土地と建物の相続税評価額が下がります。
つまり、借金をしたから相続税が安くなるわけではありません。
借金をするのは、現金を調達する手段であり、相続税を安くするための手段ではないのでご注意ください。
まとめ
①借入をしても相続税は下がらない
②勘違いしていた方はまず簿記3級を取りましょう
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楽待 不動産住宅新聞でもコラム連載しています。