ブログ

専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第404回】弁護士 関 義之が斬る!     「株式会社の定款の見直しについて」 その3

●「株式会社の定款の見直しについて」

こんにちは。弁護士の関です。

今月は「株式会社の定款の見直しについて」を書いていきます。

●機関構成

前回、相対的記載事項として、
取締役会等を置くことができると説明しました。
会社法では、全ての株式会社に
「株主総会」と「取締役」が置かれますが、
それ以外に、定款の定めによって、
取締役会、会計参与、監査役、監査役会、会計監査人、
監査等委員会又は指名委員会等を
置くことができるとされています(会社法326条2項)。
様々な組み合わせが考えられますが、
中小企業のような非公開会社では、
「取締役会」を設置するか(取締役会設置会社といいます。)、
これを設置しないか
(取締役会非設置会社といいます。)の
選択が大きなポイントになります。

まず、取締役会を置くか否かで
株主総会の権限が変わります。
取締役会設置会社では、
株主総会の決議事項は法令・定款所定の事項に限定され
(会社法295条2項)、
取締役会が会社の中心的な意思決定機関となります。
一方で、取締役会非設置会社では、
株主総会は会社の組織・運営・管理
その他一切の事項と広い範囲で決議することができます(同条1項)。

次に、取締役の人数は、
原則として最低1人でもよいとされていますが
(会社法326条1項)、取締役会を置くと、
取締役は最低3人必要になります
(同法331条4項)。
また、取締役会設置会社は、
監査役や会計参与等を置かなければなりませんが
(同法327条2項)、
一般的に選択されることが多い監査役の場合1人でもよいとされています。
従って、取締役会を置く場合には、
役員は、最低でも、
取締役3人+監査役1人で合計4人必要になります。
実際に稼働している者が少ないにもかかわらず、
旧商法時代からそのまま取締役会が設置され、
人数合わせのために、
会社の経営に全く関与していない者に
取締役に就任してもらっている例がありますが、
名目的な取締役であっても会社や第三者に対し
責任を負うことがありますので、
定款を変更し、取締役会を廃止し、実態に合わせて、
実際に経営に関与している者だけで
取締役を構成することをお勧めします。
また、迅速な意思決定を実現するために、
取締役会を廃止する例もあります。

実務上は、非公開会社の場合、
①株主総会+取締役、
②株主総会+取締役会+監査役のいずれかの
組み合わせの機関構成をよく見かけますが、
③株主総会+取締役+監査役という
組み合わせもたまに見かけます。

●株券の発行・不発行

また、会社法上、株式会社は原則として
株券を発行しない会社(株券不発行会社といいます。)
なのですが、定款の相対的記載事項として、
株券を発行することができるようになります
(具体的には、定款に株券を発行する旨の定めを入れます。
株券発行会社といいます。)
(会社法214条)。
中小企業のような非公開会社では、
このように株券不発行会社から
株券発行会社に定款変更することは
あまりないのではないかと思いますが、
逆に、現在、株券発行会社である場合に、
株券不発行会社に定款変更をすることはよくあります。

実は、平成18年5月1日に会社法が
施行される前の旧商法時代に設立した株式会社では、
現在の会社法の考えとは逆で、
定款で株券を発行しない旨を定めない限り、
株券発行会社とされていました。
そして、会社法施行時に存続する株式会社は、
定款に株券不発行の定めがなければ、
株券発行会社である旨の定款の定めがあるものとみなされました
(会社法整備法76条4項)。
この結果、旧商法時代に設立した株式会社で、
定款に特段の定めがなければ、
現在、株券発行会社となっています。
株券発行会社は、現実的に株券があるか否かは関係ありません。
あくまで定款の定めにより決まります(会社法117条7項)。
いずれにしても、株券発行会社であれば、
その旨が登記されていますので
(同法911条3項11号)、
自社が株券発行会社か分からない場合には、
会社の登記をご確認ください。

株券発行会社か否かでよく問題になるのが、
株式を譲渡する場面です。
会社法上、株券発行会社の場合、株式を譲渡するには、
株券の交付が必要とされています。つまり、株券を交付しなければ、
当事者間でいくら株式を譲渡したと言っても、
その効力は生じません(会社法128条1項本文)。
このことは、M&Aにより株式譲渡をする場合に買い手からの
デューデリジェンスにより発覚することが
よくありますが、親族や従業員に株式を譲渡する場合でもあっても、
同じことです。
そのため、特に、事業承継の準備段階で、株式を譲渡する前に、
定款を変更し、
株券不発行会社になっておくことをお勧めします。
なお、株券不発行会社にする場合には、
定款で、株券を発行する旨の定めを廃止する以外に、
公告が必要になる場合がありますので、司法書士にご相談ください。

ABOUT ME
関 義之
「関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士」 平成10年 3月に早稲田大学法学部を卒業し、 その年の10月に司法試験に合格。 1年半の司法修習を経て、平成12年10月から弁護士登録。 平成23年10月から中小企業診断士にも登録。 法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、 代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、 契約書の作成・チェック等、 紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。 不動産の賃貸・売買や、 遺言・遺産分割・遺留分など相続に関する相談を、 幅広く受けている。 特に力を入れている分野は、中小企業の事業承継支援。 セミナー経験多数。 詳しくはWebサイト参照  https://seki-partners.com/
さらに詳しく知りたい方へ