~分譲マンション投資の魅力~
管理規約を確認する際、
賃貸運用や民泊利用に関するルールとあわせて押さえておきたいのが、
リフォーム工事に関する規定です。
中古の分譲マンションを購入し、
賃貸用に室内をリフォームしようと考えたとき、
どのような工事であれば自由にできるのか、
どのような工事には管理組合の承認が必要なのかを
事前に把握しておくことが重要です。
各マンション毎に管理規約で独自にルールが
設けられていることがありますが、
国土交通省の「マンション標準管理規約」では、
リフォーム工事の内容によって手続きの区分が定められています。
大きく分けると、管理組合の承認が必要な工事、
届出が必要な工事、そして届出も承認も不要な工事の3つに分類されます。
1.管理組合の承認が必要な工事
建物の共用部分や構造、
他の住戸に影響を及ぼすおそれがあるリフォームは、
工事に着手する前に管理組合(理事会)へ
の申請と承認を受けることが義務付けられています。
標準管理規約第17条では
「専有部分の修繕等であって
共用部分又は他の専有部分に影響を与えるおそれのあるもの」を
事前承認事項と定めています。
典型的な例として、まず間取りや構造に関わる工事が挙げられます。
室内の壁を撤去したり新設したりする行為は、
建物の構造強度や防音性能に影響を及ぼす可能性があるため、
事前に理事会の許可が必要です。
特に耐力壁の改変は区分所有法で禁止されており、
そもそも行うことができません。
床材の変更工事も承認対象となります。
たとえばカーペットからフローリングへ張り替える場合、
遮音性能が変わることで下階への生活音に影響を及ぼす可能性があります。
多くのマンションでは「床材は遮音等級○○以上」といった
独自基準を設けており、無断で基準外の床材に変更することはできません。
給排水管やガス管の移設も重要なポイントです。
キッチンや浴室、洗面の配置を変えるために
配管経路を変更・延長する工事は、共用部分である
パイプスペース内の作業や床下・壁内の構造に手を加える場合があり、
事前承認が必要です。
意外に見落としがちなのが、玄関扉や窓サッシの扱いです。
これらは各住戸に専用使用権が与えられている部分ですが、
実は「共用部分」に分類されます。
したがって勝手に取り替えたり、
外側を塗り替えたりすることは認められず、
理事会の承認が必要になります。
特に玄関扉は防火設備でもあるため、
交換や外側の塗装変更は自由にできません。
窓サッシも同様で、マンション全体の外観や断熱性能に関わるため、
住戸単位での交換は原則できません。
ただし、2022年の標準管理規約改正により、
管理規約・細則で定めれば、
共用部分である窓サッシについても、
各区分所有者の責任と負担で個別交換を認めることが可能になりました。
実際に交換できるかどうかは各マンションの規約次第ですので、
必ず管理組合に確認しましょう。
また、バルコニーは各住戸専用に使える範囲ではありますが、
区分所有法上は共用部分(専用使用権付)です。
そのため、手すりや壁面の塗装変更、タイルを張る、
物置を設置するといった行為は建物の外観や
防水構造に影響するため、許可なく行えません。
その他、エアコンや換気扇の新設で外壁に新たな穴を開ける工事、
ガス給湯器の位置を変えるためパイプスペース扉に穴を開ける工事なども、
建物躯体や共用部を損傷・改変する恐れがあるため、
管理組合の承認が下りないケースがほとんどです。
2.管理組合への届出が必要な工事
専有部分の範囲内で完結し、
基本的には自由にできるリフォームであっても、
工事中に共用部分や近隣住戸へ何らかの影響を及ぼす場合には、
事前に管理組合への申請・届出が必要になります。
標準管理規約第17条第7項では、承認不要の工事であっても
「工事業者の立入り、資材搬入、工事中の騒音・振動・臭気等」によって
他住戸や共用部に影響を及ぼす恐れがある場合は、
事前に理事長への届出を義務づけています。
具体的には、内装仕上げの変更がこの区分に該当します。
室内の壁紙張り替え、室内壁の塗装、
クッションフロアやカーペットの張替えなどは、
専有部内部の表面仕上げの更新であり本来自由にできますが、
工事中に発生する騒音や臭気、材料搬入によって周囲へ影響を与える可能性があります。
また、キッチン、浴室、トイレ、洗面化粧台など、
設備機器類の入れ替え工事は基本的に専有部分内の設備更新ですが、
工事の際には大きな騒音や振動、配管の一時的な閉止、
水や粉塵の発生などが避けられません。
したがって施工業者や日程、
作業時間帯を事前に管理組合に申請し、
必要に応じて近隣への周知やエレベーターや
廊下の保護措置について取り決めておく必要があります。
室内での棚の増設や建具の交換・新設も、
この区分に入ります。
壁面に棚板を取り付けたりクローゼットを新設したりする工事は、
構造躯体には手を加えない専有部内の模様替えですが、
ドリルによる穴あけや釘打ちなど一時的な騒音・振動が発生します。
そのため事前に作業日時を届け出ておき、
隣接住戸への配慮事項(作業時間帯の制限など)を守るよう求められます。
3.届出や承認が不要な工事
専有部分内で完結し、
工事によって他の区分所有者や共用部分にまったく
影響を及ぼさない軽微な作業については、
管理組合への届出・承認いずれも不要とされています。
たとえば、短時間で完了する内装リフォームがこれに該当します。
畳の表替え(畳表を裏返したり新調する作業)、
襖や網戸の張替え、一部屋分程度のクロス貼り替えなどは、
工事業者が入るとはいえ数時間から1日で終わり、
大きな騒音も伴わないため届出不要とされる場合があります。
エアコンの室内機・室外機交換(既存の穴・配管をそのまま利用する場合)、
ガス給湯器の同型交換、照明器具の取替え、
水栓金具の交換などは、専門業者が短時間で行い、
構造を変更したり共用部に干渉したりしないため、
届け出も不要と扱われるケースがあります。
居住者自身で行う軽微なDIYやメンテナンスもこの範囲です。
室内の電球やコンセントプレートの交換、
クロゼット内部に市販の棚板を設置する、
壁に小さなフックを取り付ける程度であれば、
届出なしで問題ありません。
4. まとめ
リフォーム工事の承認・届出区分を理解しておくことは、
分譲マンション投資において欠かせない知識です。
購入を検討している物件の管理規約を事前に確認し、
計画しているリフォームが実現可能かどうかを見極めることが、
投資成功への第一歩です。



