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長期修繕計画はすべてのマンションに用意されている? ~分譲マンション投資の魅力~

長期修繕計画はすべてのマンションに用意されている?
~分譲マンション投資の魅力~

分譲マンション投資において、
購入検討物件の長期修繕計画書を取り寄せることは、
投資判断の基本中の基本です。
しかし、ここで多くの投資家が直面する疑問があります。
「そもそも、すべてのマンションに長期修繕計画はあるのか?」と
いう点です。
資料請求をしても、
「長期修繕計画はありません」と
言われたらどうすべきなのでしょうか。

1.長期修繕計画の作成は「義務」ではない
長期修繕計画の作成は法律上の義務ではありません。
区分所有法やマンション管理適正化法を確認しても、
「長期修繕計画を必ず作成せよ」という規定は存在しないのです。
とはいえ、区分所有法では管理組合に対して
共用部分を適切に維持管理する義務が課されています。
長期修繕計画はこの義務を果たすうえで事実上不可欠な手段であり、
計画がなければ十分な修繕積立金の確保や計画的な修繕の実施が困難になります。
そのため法律上の強制力はなくとも、
国土交通省のガイドラインでも計画作成と定期的な見直しが強く推奨されています。

2022年に施行された管理計画認定制度では、
長期修繕計画の期間や見直し周期といった
基準を満たす管理組合を自治体が認定する仕組みが導入されました。
標準管理規約でも、
長期修繕計画の作成と概ね5年程度ごとの見直しが
努力目標として盛り込まれています。

さらに、中古マンション売買時の重要事項説明において、
「長期修繕計画の有無と内容」の説明が義務付けられている点です。
宅地建物取引業法に基づき、
計画が未策定の場合はその旨が買主に開示されます。
つまり、計画のないマンションは
流通市場で不利になる可能性が高く、
そういった意味でも実質的には
作成が不可欠と言えるでしょう。

2.築年数による計画整備状況の違い
国土交通省の全国調査によれば、
長期修繕計画を「作成している」管理組合は全体の約88%に達しています。
一見すると、ほとんどのマンションで計画があるように思えます。
しかし、ここに落とし穴があります。
計画期間が25年以上あり、
修繕積立金額まで適切に設定できている
管理組合は約60%にとどまるのです。
つまり残りの約40%は、
計画期間が短かったり積立金設定が不十分であったりして、
将来的に資金不足となるリスクを抱えています。

特に顕著なのが、
築年数による違いです。
東京都大田区のマンション実態調査によると、
築年代別の長期修繕計画に
基づく積立金算定率には大きな開きがあります。

2010年代以降に建てられたマンションでは
約90%以上が計画に基づき積立金を算定しているのに対し、
1980年代以前に建てられたマンションでは
約40%程度にとどまっているのです。

なぜこのような差が生じるのでしょうか。
長期修繕計画作成ガイドラインの
初版が策定されたのは2008年です。
ガイドライン整備前に建てられた古いマンションでは、
計画策定が後手に回り、
未だ整備が追いついていないケースが多いのです。

3.築古物件特有の「計画途切れ」問題
築古マンションへの投資を
検討する際に注意すべきなのが、
「計画途切れ」の問題です。

東京都の調査分析によると、
築40年超のマンションの約6割で、
築30年目以降の長期修繕計画が作成されていないことが確認されています。
これは当初作成された30年程度の長期修繕計画がそのまま放置され、
その先の計画が更新されていないのです。

築40年、50年と時間が経過しても、
手元にあるのは築30年までの古い計画だけ。
今後どのような修繕が必要で、
いくら費用がかかるのかが見通せない状態に
陥っているマンションが相当数存在するということです。

このような物件では、
修繕積立金の不足や大規模修繕工事の先送りといった
問題が深刻化している可能性があります。

4.計画がない物件にどう向き合うか
では、長期修繕計画がない物件に対して、
投資家としてどのように対応すべきでしょうか。
重要なのは、長期修繕計画がなくても、
修繕積立金がいくら積み上がっているかは確認できるという点です。
決算報告書を取り寄せれば、
現在の修繕積立金残高は必ず把握できます。
これは長期修繕計画の有無に関わらず、
管理組合が作成・保管している基本的な財務資料だからです。

次に確認すべきは修繕履歴です。
過去にどのような修繕工事が、
いつ、いくらで実施されてきたかという記録です。
これも長期修繕計画とは別に、
管理組合が保管している情報です。
この2つの情報があれば、
今後の大規模修繕に対応できるかどうかの判断が可能になります。
過去の修繕履歴から次回の大規模修繕時期を推測し、
現在の修繕積立金残高と照らし合わせることで、
資金が足りそうかどうかを見積もることができるのです。

例えば、前回の大規模修繕が10年前に実施されており、
当時の工事費用が1億円だったとします。
現在の積立金残高が8,000万円で、
次回の大規模修繕まであと5年程度と推測されるなら、
月々の積立金収入を加味して、
十分な資金が確保できそうかどうかを計算できます。
物価上昇を考慮して工事費用を
1.2〜1.3倍程度に見積もっておくことも重要です。

加えて、現地調査による建物の
「健康状態」の確認も有効です。
RC造の場合、構造体そのものが外壁となっているため、
爆裂(鉄筋の露出)や白華現象(コンクリートの劣化)といった
劣化状況を目視で確認できます。
建物の状態が良好であれば、
次回の大規模修繕までの猶予があると判断する材料になります。

しかし、不動産投資の初心者にとって、この判断は決して簡単ではありません。
長期修繕計画がない物件については
「見送る」という判断も十分に賢明です。
投資の世界には「わからないものには投資しない」という鉄則があります。
長期修繕計画という判断材料がない状態で、
自分で将来の修繕費用を見積もる自信がなければ、
その物件は縁がなかったと考えて次の物件を探す方が安全です。

長期修繕計画が整備されている物件は数多くあります。
特に2000年代以降に建てられたマンションでは7割以上、
2010年代以降では9割以上が計画に基づいて積立金を算定しています。
わざわざリスクの高い物件に挑戦する必要はないのです。

まとめ
長期修繕計画が整備されている物件は数多くありますが、
「あって当然」のものではなく、
その有無や内容には物件ごとに大きな差があります。
この実態を理解したうえで、
自分の経験レベルに見合った投資判断を心がけましょう。

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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