賃貸住宅に長期修繕計画は必要か
皆さんこんにちは。大家兼不動産屋の廣田です。
前回の続きを話していきたいと思います。
4.長期修繕計画の立て方
長期修繕計画を立てる手順は次のとおりです。
(1)現状把握
対象の物件の築年数、構造、仕様を調べます。築年数や構造は、
把握している人が多いと思いますが、
この機会に物件ごとに整理しておくことが良いと思います。
同時に建築図、検査済証など書類の有無を確認しておくと後々役立ちます。
前回の大規模修繕を実施した時期などの修繕履歴を調べます。
建物全体に関する修繕だけでなく、個々の部屋に関しても、
エアコン、給湯器などの更新した時期を把握します。
物件を実際に観察し、劣化状況を確認します。
給湯器や消火器には、製造年月日が記載されているので、
更新時期を決めるのに役立ちます。また、写真を撮影し、残しておくようにしましょう。
(2)修繕内容と実施時期
現状把握の結果から、必要な修繕内容と実施時期を決めます。
主な修繕工事の周期は下表を参考にしてください。
外壁の修繕工事のように、
外部足場が必要な工事は、
他の外部足場が必要な工事と同時に実施した方が、
費用の削減になります。
表には実施時期は、10~15年というように幅をもって記載されていますが、計画上は、
12年といように適当な時期を決めて計画を立てます。
また、過去に実施した修繕時期を加味し、修繕を実施する時期を決めます。
(3)修繕費用の把握
修繕費用の把握には手間がかかります。
外壁塗装や防水工事なの大規模修繕工事などの金額の大きい修繕や、
実施時期が近いもの(概ね5年以内に実施予定の修繕)は、
工事業者に見積もりを依頼し費用を把握します。
それ以外のものは、過去の実績などを参考に概算で費用を計上します。
(4)修繕計画をまとめ、費用を集計
把握した、修繕内容、実施時期、費用を、
縦方向に修繕内容、横方向に現在を起点に年を記入した表を作成し、
修繕内容の行の、修繕を実施する年にその費用を記入します。
記入した表に従って修繕費用を年ごとに集計します。
(5)把握した費用をベースに資金計画
計画表全体の費用の合計額を、計画年数で割った金額が、
毎年積立が必要な金額になります。
例えば、20年間で、3千万円修繕費用が必要な場合は、
3千万円 ÷ 20年 = 150万円/年 (12.5万円/月)
となります。
・原状回復費用の考え方
原状回復費用に関して、一回あたりの費用は、
修繕履歴からある程度想定することが可能ですが、
実施時期に関しては、入退去のタイミングなので把握が困難です。
そこで、平均居住年数を使って計算します。
原状回復費用(1年間あたりの費用)
= 部屋数 × 原状回復費用(1部屋1回あたり)÷ 平均居住年数
物件の平均居住年数を把握している人は少ないと思います。
そこで、平均居住年数は、単身用3年、ファミリーを6年として計算します。
この数値は、賃貸住宅管理協会の日菅協短観に記載された数値を参考に決めました。
その後、実態に合わせて見直しをしていけば良いと思います。
原状回復費用以外にも、キッチンの更新や間取り変更など、
部屋ごとに実施するバリューアップの費用に関しても、
原状回復費用と同様な考え方で費用を把握します。
第26回日菅協短観
https://jpm.jp/marketdata/pdf/tankan26.pdf