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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第451回】不動産鑑定士・住宅診断士
皆川 聡が斬る!②

『修繕費高騰時代にどう備えるか
—— 鑑定士が見る建物価値維持のポイント』

こんにちは、今月担当の不動産鑑定士・住宅診断士の皆川聡です。
令和7年の地価上昇が注目される一方で、
賃貸住宅オーナーの皆さまにとりまして、
より現実的な課題となっているのが「修繕費の高騰」です。
今回は、『修繕費高騰時代にどう備えるか —— 鑑定士が見る建物価値維持のポイント』
を記載させていただきます。

人件費や資材費の上昇により、
外壁改修や屋上防水、給排水設備の更新費用などは、
ここ数年で2~3割ほど上昇しているといわれています。
地価や賃料が上向いていても、
実際の手残りが減っているという声も少なくありません。
今後は「修繕をいかに計画的に行うか」が、
資産価値維持の最大の鍵となります。

まず大切なのは、長期修繕計画の見直しです。
築年数や構造に応じた修繕周期を機械的に適用するのではなく、
建物インスペクション(現況診断)を行い、
劣化の実態に応じて優先順位を再設定することが有効です。
たとえば外壁塗装と屋上防水を同時に施工することで、
足場設置費を一度で済ませることができ、
全体コストを10~20%削減できるケースもあります。
修繕履歴と将来計画の整合性が取れている建物は、
鑑定評価上も「維持管理良好」として安定的に評価されやすくなります。

次に、修繕費の平準化 を意識することが重要です。
突発的な大規模工事を避けるためには、
毎年一定額を積み立てる仕組みを整えておくと安心です。
エレベーター、配管、防水といった主要項目ごとに
「耐用年数別の積立モデル」を作成し、
更新費用を数値で把握しておくことで、
資金繰りの安定化を図ることができます。

また、省エネ・耐久性を意識した改修 も効果的です。
初期費用はやや高くても、断熱塗料や高耐候性外壁材、
LED照明、太陽光発電などを採用すれば、
修繕周期の延伸や光熱費削減につながり、
長期的に利回り改善が見込めます。
最近では入居者の省エネ志向が高まっており、
こうした取り組みが入居促進にもつながります。

さらに、複数業者からの相見積もりと、仕様書の明確化は欠かせません。
人手不足によって施工会社間の価格差が広がる中、
仕様が曖昧なままでは正確な比較ができません。
建築士や住宅診断士など専門家の協力を得て、
材料や施工範囲を明示した仕様書を作成することで、
適正価格の見極めが容易になります。
一方で、修繕を先送りすることには大きなリスクがあります。
外壁劣化や漏水を放置すれば、
構造躯体の損傷に発展し、
結果的に修繕費が数倍に膨らむこともあります。
鑑定評価の観点からも、
劣化放置物件は「維持管理不良」として
評価減の対象となることがあります。

最後に、金融機関との関係づくりも忘れてはいけません。
大規模修繕を見据えて、
リフォームローンや借換えを早めに検討しておくことで、
将来の資金計画に柔軟性を持たせることができます。
特に金利上昇局面では、資金調達の見直しが安定経営の鍵を握ります。
地価や賃料の上昇が報じられる今だからこそ、
建物の物理的価値を守る修繕戦略が問われています。
「後手の修繕」はコストを膨らませ、「先手の計画」は資産を守る。
修繕を単なる出費ではなく、「価値を守る投資」として捉えることが、
これからのオーナー経営の分かれ道になるでしょう。

今回はここまでとさせていただきます。
皆様のお持ちの物件の資産形成の一助としてご活用いただきまして、
少しでも皆様のご参考になれば幸いです。
今回も最後までお読みいただきまして、誠にありがとうございます。

ABOUT ME
皆川聡
株式会社Aoi不動産鑑定 大手不動産鑑定会社に約8年従事し、メガバンク、政府系金融機関、地銀、信用金庫、信用組合などの金融機関の担保評価をメインに約2500件の案件を携わり、国際線ターミナルの評価の実績もあり。 退職後、平成27年4月に開業。 開業後は、税務対策の鑑定評価や裁判調停等の鑑定評価での多数実績。住宅診断を反映した鑑定評価にて、より清緻な鑑定評価を行っており、鑑定評価額だけではなく、皆様の建物の日ごろのメンテナンスのポイントなどもご提案し、ご好評をいただいております。また2020年10月には、相続税の還付請求にて、他の不動産鑑定士が国税不服審判所にて否認された案件を、その後当職が不動産鑑定を担当。圧倒的な不動産鑑定評価により、東京地裁において、国税庁との裁判で無事完全勝訴しております。
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