3棟26室のアパートを所有しています。賃貸経営を始めたときは、税金が還付されていましたが、ここ何年かは税金が高くなってきています。建物を定率法で償却していて、減価償却が少なくなってきていることが原因かと思います。借入金の残期間は10 年で資金繰りも苦しくなってきて、税金を払うために賃貸経営をやっている感じがしています。資金繰りを改善する方法はありますか?
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恐らくデッドクロスの状況になっているのではないかと思われます。デッドクロスとは、借金をしてアパートを経営している場合に、1 年間あたりの元本返済額が減価償却費よりも大きくなる時点をいいます。元本の返済は「お金が出ていくが、経費にならない」、減価償却は「お金が出ていかないが、経費になる」という相反する関係になっています。このバランスがうまくいかないとキャッシュフローがマイナスになる危険性があるので注意しなくてはいけません。定率法で減価償却をすると、年々償却費が少なくなっていきます。
また、借り入れの返済方法を元利均等返済にすると、返済額は一定になりますが、借入金の利子の金額は少なくなっていきます。年数を重ねていく毎に「お金が出ていかないが、経費になる」減価償却よりも「お金が出ていくが、経費にならない」借入金の元本の返済が大きくなっていくため、支出する税金が増えていきます。つまり、年々支出する返済額はかわらないのに、利息金額と減価償却の減少から所得が大きくなります。そして、支払う所得税が多くなるため、キャッシュフロー上、手残りがマイナスになる可能性が高くなります。返済期間が残り10年とのことですので、この時期に資金繰りが苦しくなる方がかなり多くいらっしゃいます。
本来であれば、このデッドクロスの時期を事前に把握し、家賃収入の一部を積み立てておいて、資金繰りが苦しくなる時期に繰り上げ返済をすれば、毎月の返済額が減り資金繰りが改善します。しかし、今までの積み立てがないと難しいでしょう。それ以外の回避方法としては、まず税金を減らすことを考えましょう。税金を減らすと言っても、経費を使えばよいということではありません。経費を使うことで、お金が出ていくので、資金繰りはより悪くなります。お金が出ていかない節税をしましょう。
例えば、青色事業専従者に給与を支給したり、法人化したりすることです。税金を減らしても、資金繰りがよくならないのであれば、借り換えなどにより、返済期間を延ばして、毎月の返済額を減らすことを考えましょう。返済総額は減らない(返済期間を延ばすので、むしろ増える)ので、一時しのぎでしかありません。しかし、返済期間を延ばすことで、資金繰りは改善されるので、建物のバリューアップをするなどして、この先も家賃収入が維持できる体制を整えることが必要です。借入金が負担と考えるのであれば、高く売却できるうちに、売却してしまうことも一つの方法かと思います。