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Q新築建物を建築し、貸事務所として賃貸をする予定です。消費税還付はできますか。

平成27年10月に土地を購入し、平成27年12月に建物の請負契約を締結しました。建物は平成28年10月に完成します。完成後の建物は、貸事務所として賃貸する予定です。貸事務所の賃料は課税売上になるため、建物の消費税の還付を受けられると聞きました。消費税の還付はできるのでしょうか?できるのであれば、何をすればよいでしょうか?

A

(1)消費税の課税事業者選択届出書の提出期限
貸事務所の賃料は課税売上に該当しますので、住宅用の建物のように還付スキームを使わずに消費税の還付を受けることが可能です。ただし、建物の引渡しを受ける際に、消費税の課税事業者でなければ、消費税の還付を受けることができません。個人の場合、前々年(基準期間)の課税売上高が1,000万円超もしくは、前年の1月~6月までの期間(特定期間)の課税売上高が1,000万円超であれば、その年が消費税の課税事業者になります。
上記の要件を満たさない免税事業者であっても、「消費税課税事業者選択届出書」を税務署に提出することで課税事業者になることができます。この届け出の期限に注意が必要です。原則は、適用を受けようとする課税期間の初日の前日までに提出が必要です。例外として、適用を受けようとする課税期間が新たに事業を開始した日の属する課税期間である場合には、その課税期間中の届出でよいことになっています。つまり、すでに事業を行っている場合には、平成27年の年末までに届出をしていれば、平成28年から消費税の課税事業者に
なれます。新たに事業を行う場合には、平成28年の年末までに届出をしていれば、平成28年から消費税の課税事業者になれます。
この「新たに事業を開始した日」とは、具体的には、その事業を行うために必要な事務所、店舗等の賃貸契約の締結、資材等の課税仕入等の準備行為を行った日とされています。実際に売上が発生した日ではなく、その準備行為も含まれることなります。本事例のケースでは、土地を購入して、建物の請負契約を締結することが、準備行為に該当する可能性があります。平成27年の段階では、建物を自宅として利用するつもりで、建物が完成した平成28年に貸事務所として利用することに決めたということであれば、平成27年の時点では準備行為とは言えず、平成28年が事業開始した日と言えます。
(2)消費税課税期間短縮の特例
しかし、消費税の還付を確実に受けるのであれば、税務署から指摘を受けないようにする方がよいのではないかと考えます。つまり、建物の請負契約が準備行為に該当し、平成27年末までに「消費税課税事業者選択届出書」を出せなかった場合でも、課税事業者になれる方法があります。
「消費税課税事業者選択届出書」と一緒に「消費税課税期間特例選択・変更届出書」とを提出します。「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出すると、消費税の計算期間(課税期間)は1年間から3か月ごとの期間又は1か月ごとの期間に短縮されます。本事例のように10月に建築が完成するのであれば、9月30日までに「消費税課税事業者選択届出書」と「消費税課税期間特例選択・変更届出書」を提出します。すると、10月1日から12月31日までの課税期間から課税事業者になることになります。なお、課税期間の特例の適用を受けた日から2 年間は、課税期間の特例の適用をやめることはできません。
(3)消費税の還付が得か否か
なお、「消費税課税事業者選択届書」を提出して課税事業者になると、2年間は止めることができません。さらに、この2年間のあいだに新築をすると、新築した年を含めて最低3年間は課税事業者を止められません。つまり、本事例の場合には、新築した平成28年は還付を受けますが、翌年と翌々年は貸事務所の賃料にかかる消費税を納税しなければならないのです。還付される消費税から納税になる消費税を引いて、どれくらいメリットがあるのか、予め試算することが重要です。