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アパートを取り壊して駐車場にすると、固定資産税は6倍になる?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第273回

相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。


Q
築45年の木造アパート(10戸)があります。
敷地は300㎡、土地の固定資産税評価額は6,000万円です。
空室が埋まらず、建て替えの決断もつかないので、
いったん取り壊して月極駐車場にしようかと考えています。
ところが、不動産会社の担当者から
「更地にすると固定資産税が6倍になりますよ」と言われました。
土地の固定資産税と都市計画税は、
いま合わせて年20万円ほどです。
これが120万円になるということでしょうか。

A
6倍にはなりません。
この土地なら、固定資産税と都市計画税を合わせて年71万円ほど。
いまの3.5倍です。なぜ6倍ではなく3.5倍なのか、順に見ていきます。

1.「6倍」の出どころ
住宅が建っている土地には、
課税標準を引き下げる特例があります。
固定資産税は次のとおりです(地方税法349条の3の2)。
・小規模住宅用地……住宅1戸につき200㎡までの部分は、評価額の6分の1
・一般住宅用地……200㎡を超える部分
(家屋の床面積の10倍まで)は、評価額の3分の1

この6分の1が外れるから6倍になる。
それが「6倍」という話の中身です。
なお、都市計画税は、6分の1ではありません(地方税法702条の3)。
・小規模住宅用地……評価額の3分の1
・一般住宅用地……評価額の3分の2
都市計画税は、もともと3分の1にしかなっていません。
特例が外れても、上がり幅は3倍です。

なお、ご相談のアパートは10戸ですから、
10戸×200㎡=2,000㎡までが小規模住宅用地です。
敷地300㎡は、その全部が6分の1(都市計画税は3分の1)で計算されています。

2.特例が外れても、評価額の満額では課税されない
住宅用地でなくなった土地は、
「商業地等」という区分に入ります(地方税法附則17条4号)。
店舗の敷地も、更地も、駐車場も、ここでは同じ扱いです。

商業地等には、負担調整措置という別の仕組みが働きます。

評価額に対する前年度の課税標準額の割合を負担水準といい、
これに応じて今年度の課税標準額が決まります。
・負担水準が70%を超える……評価額の70%
・60%以上70%以下……前年度の課税標準額に据え置き
・60%未満……前年度の課税標準額+評価額の5%
(評価額の60%が上限、20%が下限)
いちばん高くても、
課税標準額は評価額の70%です。
評価額の満額で課税されることはありません。

この仕組みは、令和8年度まで現行のまま
続くことになっています(令和6年度税制改正)。

3.計算の具体例
固定資産税率1.4%、都市計画税率0.3%で計算します。
【アパートがあるとき】
固定資産税 6,000万円 × 1/6 × 1.4% = 14万円
都市計画税 6,000万円 × 1/3 × 0.3% = 6万円
合計 20万円
【取り壊して駐車場にしたとき】
固定資産税 6,000万円 × 70% × 1.4% = 58万8,000円
都市計画税 6,000万円 × 70% × 0.3% = 12万6,000円
合計 71万4,000円
20万円が71万4,000円ですから、3.57倍です。

固定資産税だけなら、6分の1が70%になって4.2倍。
都市計画税は3分の1が70%になって2.1倍。
この二つを合わせると、3.57倍に落ち着きます。

ここでは住宅用地としての負担水準が100%に達しているものとしました。
周囲の水準しだいでは課税標準額が評価額の60%台で据え置かれ、
3倍前後にとどまることもあります。

なお、アパートを取り壊せば、家屋にかかっていた
固定資産税はなくなります。
築45年なら家屋の評価額は下がりきっていますが、
その分は差し引いて考えてください。

4.数年かけてじわじわ上がらないケース
負担調整措置は、前年度の課税標準額に
評価額の5%を足していく仕組みです。
「取り壊した翌年はわずかしか上がらず、
70%に届くまで何年もかかる」と説明されることがあります。
そうはなりません。

負担調整に使う「前年度の課税標準額」は、
去年の納税通知書に書かれていた
金額そのままではないからです。

前年中に地目や利用状況、
特例の適用の有無に変更があった土地では、
前年度も今年と同じ状況で
あったと仮定して計算し直した額に置き換えられます。
市町村の案内では「比準課税標準額」と呼ばれています。

住宅を取り壊した土地は、
「前年度も住宅用地ではなかった」ものとして
負担水準を判定されるわけです。

周囲の駐車場や店舗の敷地がすでに60〜70%の水準にあるなら、
この土地も同じ水準から始まります。
5%ずつ上がるのを待ってはくれません。
上がるのは取り壊した年の翌年度からで、
しかも一度に上がります。

5.まとめ
6倍ではなく、
3.5倍。とはいえ年20万円が年71万円になる話です。
駐車場の収入でこれを賄えるかどうかは、
取り壊す前に確かめておくことです。

固定資産税は、1月1日現在の現況で決まる税です。
だから、取り壊す時期がそのまま税額に効いてきます。

ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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