大家業にとって切っても切れない縁にあるのが、減価償却と借金の返済です。今回は、この二つが強く結びついているということについてお話しします。
1.減価償却は固定資産の費用化
(1)資産と収益の関係
大家さんの収益の源であるアパートなどの不動産は、購入した金額全額が購入時に一括で経費とはなりません。購入した資産はこれより永きにわたって収益を上げていくものですから、会計のルールでは、この購入金額を、収益を上げる期間に振り分けて経費化する、と決めています。この仕組みが「減価償却」です。収益を上げる期間は本来はその状況ごとに違うはずですが、ルール上、あらかじめ資産の種類ごとに決まっており、これを耐用年数と言います。つまり固定資産の購入金額は、耐用年数に分けてその期間期間において経費になっていくのです。
(2)大家業定額法
購入金額を期間に振り分ける計算方法にはいろいろあるのですが、大家業で一般的なものは定額法です。これは簡単に言うと、固定資産の金額を単純に耐用年数で割った金額を減価償却費とするもので、毎年同じ額だけ経費化していくものです。減価償却を考える場合に重要なことは、これはお金の流れ(キャッシュフロー)とは無関係だということです。お金は資産の購入時に一括で出て行きますが、経費となるときに実際のお金は動いていないことに注意してください。
2.借金の返済と資産の熱い関係
(1)借金返済は費用にならない
アパート等の不動産の購入に必ずつきまとうのは借入金です。ルール上、借金の返済は経費にならないことに注意が必要です。もし借金の返済が経費になるのであれば、そのスタート時つまり借金総額が手元に入ってきた時に、その全額を収入にしなければならなくなります。当然にそのような処理はしませんので、借金返済は経費にならず、経費になるのは返済時の利息のみです。ここで重要なことは「借金返済でお金が出て行っても経費にならない」ということです。
(2)減価償却額と返済額は表裏一体
借金を利用する最大のメリットは、手持ち現金が少なくても金額の高い資産を取得できるという、「レバレッジ(てこ)効果」があるためです。借金することで、手持ち資金の数倍の不動産を購入することができますから、それだけ収益も費用も大きくなりますし、キャッシュフローも大きくなります。そうなると、経費にならない借金返済と経費になる減価償却費をうまく組み合わせないと収入の把握が難しくなる、ということは容易に想像できると思います。高額の不動産を購入すると当然に借金の返済額も多くなり、毎年の減価償却費も大きくなります。大家業においては、物件の購入とその後の減価償却費、そして借金返済額という両車輪のバランスを考えることが大変重要になります。
3.まとめ
借金の返済額と減価償却費は、両方ともキャッシュフローや収益に大きな影響を与えます。常に意識して注意しましょう。