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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第十一回】一級建築士 遠田 将徳が斬る!③

すべての大家さんに必ず実行してほしい、塀の点検・補修③

こんにちは。一級建築士の遠田(エンダ)です。
今回のコラムでは、『すべての大家さんに必ず実行してほしい、塀の点検・補修』をテーマに、情報提供を致します。
『身の回りの塀の種類・基準』、『塀の点検方法』とご説明して参りました。
今回は、『塀の補強方法』についてご紹介致します。

塀の点検結果が不適合だった場合の対応は?

さて、皆さん所有のアパート・マンションにある塀の点検結果はいかがでしたでしょうか。

高さは基準以下でしたでしょうか。
また、塀の厚さは基準以上でしたでしょうか。

点検の結果、適合していた塀は、現在のところ問題ない可能性がございます。

では、適合していない場合は今後どうしたらよいのでしょうか。

対応方法は大きく3つになるかと思われます。

① 【塀を解体の上、再建設】

◎ 現在の基準に沿った安全性の確保ができます。
× 工事の際、隣地の方の敷地内からの作業が必要となる場合があります。

② 【塀の高さを下げる改修工事】

○ 現在の基準に一部沿った安全性の確保ができます。
△ 傾いていたり、破損している等、改修工事が不可能な場合もあります。
× 外部からの視認性・防犯性に影響があります。

③ 【補強工事】

◎ 施主様の敷地内にて工事が完結します。
△ 塀の外観に大きく影響があります。
△ 工法により再建設の方が安価となる場合があります。
△ 傾いていたり、破損している等、改修工事が不可能な場合もあります。
× 一定期間後、再度改修が必要になる可能性があります。

【再建設】は理想的ですが、最大の障害は隣地対策と言えるかもしれません。

塀が越境している、共有の塀である、土留めに使っている等、解体・再建設が容易でない場合が多々あります。

その点、【補強工事】はコスト高になる可能性もありますが、施主様の敷地内で完結できるメリットがあるため、【補強工事】を選択する方も多いようです。

続いて、【補強工事】の一般的な工法を2つご紹介致します。

【工法参考例】

①控壁による補強方法

②鋼柱による補強方法(応急的な補強方法)

※約3年後には再度検討が必要です。
※世田谷区補強方法令 参照

②は最も一般的な方法ではございますが、あくまで応急的な方法とはなります。3年程度で再建設か再補強の選択が必要となります。

先の地震の影響で、塀の補強を勧める業者様も多いかもしれませんが、専門家と相談の上、次回の塀の建て直し時期、コストを見据え、補強工事の方法を選択する必要があります。

次回の配信では、各自治体で設けている『塀の補強、撤去に伴う助成金』についてふれていきたいと思います。

ABOUT ME
遠田将徳
株式会社ウィル建築設計 顧問/武蔵工業大学工学部建築学科卒業。一級建築士、色彩検定二級。 ハウスメーカーにて、モデルハウスの企画設計・デザインコードの作成、戸建分譲のランドスケープデザインを経て、賃貸住宅の設計を経験。戸建住宅・賃貸住宅の新築、リフォームの見積り、外構工事と幅広く手掛け、許認可業務、実施設計、デザイン、コーディネートまで、建築に関わる様々な目線からの適切なアドバイスを得意とする。
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