自分で確定申告をする際、しばしば税務署と争点となるのが「自家消費」です。今回はこの「自家消費」について説明します。
1.所得税にしか出てこない科目
(1)「自家消費」?「家事消費」?
これも「事業主貸」「事業主借」と同じで、個人の確定申告すなわち所得税計算の世界に出てくる科目です。法人の会計ルールでは使われません(消費税についてはここでは触れません)。
業界的にはいろいろな呼び方があるのですが、要するに、大家業などのビジネスに使うのではなく、自分のために使った分のことを「自家消費」とか「家事消費」と言っています。科目名はどちらを使っても間違いではありませんが、以下、ここでは「自家消費」に統一します。
(2)なぜ「自家消費」はあるのか?
個人の場合、商売で使う電話や車などは個人名義での購入や契約になります。その場合、商売用に使う部分と個人的な用事(家事)で使う部分とが混在することになるのは当然と言えます。商売の収支計算上、経費にできるのは商売に使った分だけですので、この「私用部分」のことを「自家消費」と呼んでいるわけです。
「事業主貸」「事業主借」の時に「仮想で事業と家計をわけるようなもの」と説明しましたが、こちらも同様です。「事業主貸・借」は支出の形での処理をしますが、「自家消費」の場合は、事業用から個人へ、個人消費分を「売上」た形での処理をします。従って損益計算書上に売上や雑収入と同じ項目に「自家消費」が出てくるので、「個人分をきちんと分けている」のが明確になり、一般には税務署の受けもいい、と言われています。
2.数字はどう決める?
(1)明確に記録する
例えば通話記録を一つ一つ抜き出し、仕事用とプライベートを分ける。インターネットの接続時間を商用と私用ごとに記録する、など、事細かに記録すれば「自家消費」分の算出は可能です。しかし、一般にはこのようなやり方は手間がかかり過ぎるのでお勧めできません。
(2)割合で決める
時間や回数などで商用と私用を分けられるのであればいいのですが、例えばガソリン代などは、継ぎ足しする時の量も単価も変わるわけですから、厳密に分けることなどできません。そういう場合には、「私の場合は私用は50%」とか「私は30%」とか、自分の判断で適当に(いい加減に、という意味ではありません)決めてしまいます。こういう処理が認められるところが、所得税の世界のユニークなところだと思います。
もちろん、ある程度常識的な範囲での根拠は必要です。しかしそれほど厳密でなくても、感覚的なもので全然構いません。ただし、それを継続的にあてはめていくことが必要です。
3.まとめ
大家業に深くかかわる所得税においては、いろいろなルールがあります。特に商用と私用を分けることについては、日ごろから注意するようにしましょう。