大家業は新築物件だけでなく、築古の物件に出会う機会も多いことから、中古物件に関する知識が要求されます。今回はその中で特に重要な、耐用年数について説明します。
1.耐用年数とは
(1)使用期間とは異なる
建物などの資産は、購入した時にかかった費用の全額を費用にすることはできません。
これは、大家業などに使われる資産が事業を通じで長年にわたり利益を生んでいくことが前提となっているので、取得価額をその資産を使用する全期間に渡って分割して経費化するのが妥当だ、という考えに基づくものです。この経費化した費用のことを「減価償却費」と言うわけです。言うまでもなく、耐用年数は減価償却と非常に密接な関係にあるものなのです。
経費化するための期間は誰でも自由に決めていいものではなく、法律で決まっているもので、これを「耐用年数」と言います。耐用年数は資産の種類によって異なる数字が決められているのですが、必ずしも「使用可能期間」とは合致していません。
あくまでも税務当局が決めたルールに従った数字になっていることに注意してください。
(2)覚えていきたい数字
建物ではありませんが、電気設備や給排水設備などの「建物附属設備」と呼ばれる業務用資産は、耐用年数が15年とされています。これもぜひ覚えておきたい数字の一つです。
2.耐用年数の注意点
(1)中古資産は耐用年数が異なる
上で述べた耐用年数は新築物件に限ります。築古の物件の場合は、当然に、耐用年数は新築のものよりも短くなります。ただしその計算方法も決まっていまして、次のように算出します。
①法定耐用年数の全部を経過した資産
耐用年数×20%
②法定耐用年数の一部を経過した資産
(耐用年数ー経過年数)+経過年数×20%
これらの計算により算出した年数に1年未満の端数がある時は、その端数を切り捨てます。また、計算した結果が2年未満の時は2年とすることになっています。
(2)個人の減価償却は必須
耐用年数は減価償却と密接な関係にあることは既出ですが、経費化に伴い、経理上は当然に利益が減ることになります。
銀行融資を受けるためになるべく利益を多く計上したいという場合、耐用年数を長くして減価償却費を少なくすればいいのではないかとか、いっそのこと減価償却費を計上しなくてもいいのではないか、と考えてしまいがちですが、これは間違い。個人の場合、減価償却費は必ず計上しなければならないので要注意です。
これは耐用年数の長さや減価償却費の計上不計上で利益調整を防ぐためのものですから、きちんと計算し、毎年計上しなければなりません。