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【第249回】弁護士 関 義之が斬る!     「弁護士が語る コロナ禍における賃借人対応」 その2

●法律上の根拠のある減免要求

こんにちは。弁護士の関です。

賃借人からの経営難や収入減を理由とした賃料の減免、支払猶予の求めは、
基本的には法律上の根拠のないお願いであり、                    賃貸人がこれに応じなければ有効とはなりません。
それでも賃借人が賃料を支払わない場合には単なる未払いとなります。
もっとも、賃料の減免要求に法律上の根拠がある場合があります。
今回は、この法律上の根拠がある場合をご説明します。

●借地借家法の賃料減額請求

新型コロナとは関係なく、一般的に、
大家さんは賃借人から賃料の減額請求を受けることがありますが、
これは、借地借家法32条に基づくものです。
借地借家法32条1項本文には、次のような定めがあります。
「建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、
土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、
又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、
当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。」
従って、賃借人から、今回の新型コロナを理由に、
借地借家法32条の賃料減額請求をされる可能性があります。
将来、この新型コロナの影響で、土地や建物の価格が低下したり、
土地や建物の固定資産税、都市計画税等の負担が減少したり、
近傍同種の建物の賃料相場が下落するなどして、
従前の賃料が不相当といえるようになる可能性はゼロではありませんが、
新型コロナの影響はいつまで続くか分かりませんし、
土地や建物の価格等に直結するものでもありません。
少なくとも、現時点では、直ちにこの新型コロナの影響だけで、
借地借家法32条の賃料減額請求が認められるものではないと思われます。

●賃借物の一部滅失等による賃料の減額等

民法611条1項には、次のような条文があります。
令和2年4月1日に民法(債権法)の改正法が施行されましたが、
その前に締結した賃貸借契約には、いまだ、                     改正前の民法が適用になるケースもありますので、
改正前と改正後の両方の条文を掲載します。

【改正前の民法】
(賃借物の一部滅失による賃料の減額請求等)
第611条 賃借物の一部が賃借人の過失によらないで滅失したときは、
賃借人は、その滅失した部分の割合に応じて、賃料の減額を請求することができる。

【改正後の民法】
(賃借物の一部滅失等による賃料の減額等)
第611条                                    賃借物の一部が滅失その他の事由により使用及び収益をすることが           できなくなった場合において、
それが賃借人の責めに帰することができない事由によるものであるときは、
賃料は、その使用及び収益をすることができなくなった部分の割合に応じて、減額される。

改正前の民法では、賃借物が、賃借人の過失なく、一部「滅失」したときに、
賃借人が賃料の減額を請求することが「できる」としていました。
改正後の民法では、一部「滅失」のみではなく、
減額の対象を「滅失その他の事由」により使用及び収益ができなくなった場合に拡大し、
また、要件を満たせば、賃借人が請求しなくても、                 「当然に減額される」ことになりました。

もっとも、改正前の民法においても、「賃借物の一部滅失の場面に限られず、
より広く使用収益をすることができない場合一般に賃料の減額を認めるのが合理的であり、
一般にそのように解されていた」
(一問一答民法(債権関係)改正、筒井建夫ほか、商事法務P322)とのことであり、
改正前と改正後の民法でどれほど対象が異なるかは、                 今後の実務や裁判例の動向によります。

従って、いずれの民法が適用されるにしても、
例えば、新型コロナの影響で、                           事業者である賃借人が賃借店舗の休業を余儀なくされた場合に、
この民法611条1項に基づき、賃借物を使用収益できなかったとして、
休業期間分の賃料の減額を求めてくる可能性があります(改正前の民法では、
536条1項(危険負担)を根拠とすることも考えられますが、            説明が難しくなりますので省略します)。

この要求が認められるかは、                           その休業が一部滅失等による使用収益できない状態といえるのか、
また、いえるとして、その原因が、賃借人の過失によらない(改正前の民法)、
または、賃借人の責めに帰することができない事由によるもの(改正後の民法)
といえるのかによって、個別具体的なケースごとに判断されることになります。
休業が完全に賃借人の独自の判断であれば、勝手に休んだだけということで、
賃借人に責めがあり、要件を満たさないでしょう。
逆に、ビルを閉鎖するなど、                           賃貸人の独自の判断により賃借人が休業せざるをえない場合には、
賃貸人が貸さなかったということで、賃貸人に責めがあり              (従って賃借人に責めがなく)、要件を満たすことになります。
また、賃借人の責めでも、賃貸人の責めでもない「不可抗力」の場合にも、
要件を満たすことになりますが、この不可抗力に当たるのかが難しい判断となります。
例えば、感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)    に基づいて建物への立入りが制限等されたような場合には               一般的には不可抗力にあたるでしょう
(それでも、その原因を作ったのが賃借人の場合には、                賃借人の責めがあると判断される可能性もあります)。
また、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づいて、
都道府県知事は、施設の使用制限や停止を要請できることとなっており、
このような法律を根拠とはするもののあくまで任意の要請であるものに従った場合には、
不可抗力といえるのか、それとも賃借人の責といえるのかは、            様々な事情を考慮しながらの難しい判断になろうかと思います。

ABOUT ME
関 義之
関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士・中小企業診断士 平成10年3月に早稲田大学を卒業し、その年の10月に司法試験に合格。平成12年10月から弁護士登録。中小企業の総合支援を目標に掲げ、平成23年10月から中小企業診断士にも登録。法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、契約書の作成・チェック等、紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。
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