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【第278回】弁護士 関 義之が斬る!     「合同会社の「社員」について」 その3

●合同会社の「社員」について

こんにちは。弁護士の関です。

合同会社の「社員」について、続きを書いていきます。

●社員の加入

合同会社の社員になるにはどうしたらよいでしょうか。
設立時には、会社を設立するメンバーでだれが社員になるかを決定し、
その社員になろうとする者が定款を作成して、その全員が署名又は記名押印
(電子定款の場合には電子署名)をします(会社法575条)。
定款には、絶対的記載事項として、
「社員の氏名又は名称及び住所」を記載します(同法576条1項4号)。
そして、社員になろうとする者は、定款の作成後、設立登記時までに、
定款(「社員の出資の目的及びその価額」同項6号)で定めた出資金の全額を払い込み、
又は金銭以外の財産を現物出資します(同法578条本文)。
なお、合同会社の場合には、株式会社とは異なり、
現物出資に検査役の調査が不要とされています。
そして、設立登記をすることによって合同会社が成立し(同法579条)、
定款に記載された者が社員となります。
なお、業務執行社員の氏名又は名称(同法914条6号)と
代表社員の氏名又は名称及び住所(同法7号)は登記されますが、
業務を執行しない社員は登記されません。

会社が成立した後に社員が加入するのは、次のような場合です。
①.設立時と同じように、新たに出資して、社員として加入する(同法604条)
②.既存の社員が持分の全部又は一部を他人に譲渡する(同法585条1項)
③.既存の社員が死亡した場合又は合併により消滅した場合に、
相続人その他の一般承継人が持分を承継する(同法608条)

②.については他の社員(業務を執行しない社員の場合は業務執行社員)
全員の承諾が必要となり、3.については予め定款の定めが必要となりますが、
事業承継の観点で、第4回で別に解説します。

①.の新たに出資して社員として加入する方法について少し解説します。
社員は定款の絶対的記載事項ですので、
新しい社員の「社員の氏名又は名称及び住所」と
「社員の出資の目的及びその価額」を変更します。
定款変更の手続は、総社員の同意が必要となりますので(同法637条)、
社員が一人でも反対すると①の方法により新しい社員を加入させることができません。
なお、定款変更の承認方法は、予め定款で別段の定めをしておくことが可能です。

この定款変更をしたとき社員の加入の効力が生じます(同法604条2項)。
もっとも、新たに社員となろうとする者は、出資金の全額を払い込み、
又は金銭以外の財産を現物出資するまでは社員になることができません(同法604条)。

新たに加入する社員が業務を執行しない社員となるか、
業務執行社員となるか、代表社員になるかは、
第2回解説の手続によりこの時点で決めることになります。

そして、新たな社員の加入により、業務執行社員の加入、
代表社員の加入、資本金の額の増加が生じるときは
それぞれ変更登記が必要になりますが(同法915条)、
新たに加入した社員が業務を執行しない社員で、
かつ、資本金の額が増加しないときには、登記は不要となります。

●退社

次に退社について解説します。
退社とは、社員が持分の払戻しを受けて社員ではなくなることをいいます。
なお、合同会社では、社員は、
社員の地位を維持したまま出資金等の払戻しを請求することもでき(同法624条)、
これを「出資の払戻し」として、退社による持分の払戻しとは区別しています。

退社には、①.任意退社(同法606条)、②.法定退社(同法607条)、
③.持分の差押債権者による退社(同法609条)などがあります。

①.任意退社は、社員が自らの意思で退社する場合です。
円満に退社するケースもあれば、社員同士仲違いして任意退社を選択するケースも    あります。
しかし、この任意退社は、簡単にできるものではなく、
(合同会社の存続期間を定款で定めなかった場合又はある社員の終身の間合同会社が存続 することを定款で定めた場合)、
各社員は、事業年度の終了の時において退社をすることができ、かつ、各社員は、
6か月前までに会社に退社の予告をしなければならないと定められています      (同法606条1項)。
この任意退社の条件は定款で別段の定めをすることが可能です(同条2項)。
また、「やむを得ない事由」があるときは、定款の定めの有無にかかわらず、
各社員はいつでも退社することができるとされています(同条3項)。
従って、他の社員全員の同意を得られないまま(後述の法定退社の「総社員の同意」)、
すぐに退社したい場合には、この「やむを得ない事由」を満たすかどうかがポイントとなります。

②.法定退社は、次のような条文(同法607条1項各号)に定められた事由に該当し、
法律上当然に退社するという場合です。

一 定款で定めた事由の発生
二 総社員の同意
三 死亡
四 合併(合併により当該法人である社員が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 解散(前二号に掲げる事由によるものを除く。)
七 後見開始の審判を受けたこと。
八 除名

社員全員が同意すれば、「二 総社員の同意」により、時期を問わず、法定退社することができます。

社員が、「七 後見開始の審判を受けた」場合、
つまり、認知症などにより成年後見人をつけた場合には、法定退社になります。
株式会社の場合には、後見開始の審判を受けても、「株主」としての地位を失うわけでは ありません。
社員として残したい理由があれば、定款で法定退社事由から排除することができます   (5号から7号までは定款で排除できます。同条2項)。
逆に、後見開始だけではなく、保佐開始や補助開始の審判を受けたことを
「一 定款で定めた事由」として定めることも可能です。

「三 死亡」については、第4回で解説します。

任意退社でも、法定退社でも、社員が退社した場合、定款変更の手続を行わなくても、
退社した社員にかかる定款の定めを廃止する定款変更をしたものとみなされます    (同法610条)。
また、退社した社員は、その持分の払戻しを受けることができます(同法611条)。
この払戻しの際に、債権者保護手続が必要になる場合があります(同法635条など)。

 

ABOUT ME
関 義之
「関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士」 平成10年 3月に早稲田大学法学部を卒業し、 その年の10月に司法試験に合格。 1年半の司法修習を経て、平成12年10月から弁護士登録。 平成23年10月から中小企業診断士にも登録。 法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、 代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、 契約書の作成・チェック等、 紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。 不動産の賃貸・売買や、 遺言・遺産分割・遺留分など相続に関する相談を、 幅広く受けている。 特に力を入れている分野は、中小企業の事業承継支援。 セミナー経験多数。 詳しくはWebサイト参照  https://seki-partners.com/
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