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専門家が斬る!真剣賃貸しゃべり場
【第280回】
保険×不動産マイスター津曲(つまがり)が贈る    知ってトクする不動産に係る特例(相続編)            その①

~知ってトクする不動産に係る特例(相続編)~
『空き家』問題に迫ってみましょう 

今月号は、保険×不動産マイスター 津曲(つまがり) 巖(いわお)より、
お届けいたします。

今回は、特に多くのご相談をいただいているいわゆる「空き家問題」について
相続の現場、また、所有されていらっしゃる方からのご相談などから
いくつかの事例について、解説します。

●「空き家に係る譲渡所得の特別控除の特例」                                                                              (通称:空き家の特例)とは

制度の概要は、次の通りです。
『相続又は遺贈により取得した被相続人居住用家屋又は被相続人居住用家屋の
敷地等を、2016(平成28)年4月1日から2023(令和5)年12月31日までの
間に売って、一定の要件に当てはまるときは、
譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除することができる。』
というものです。

大きな目的は、近年特に、防犯や衛生、災害等の危険など問題視されている
「空き家の発生を抑制する」ためとされます。

そのため、未利用の空き家について、一定の要件を満たせば、
売却時の譲渡所得より3,000万円という大きな金額の控除を認めますよ、
しかし、あくまでも現時点で2023年12月31日までの期限付特例であるということです。

●【事例】のひとつをみてみましょう

2018(平成30)年4月にお亡くなりになった方が都内におひとりで住んでいた
1980(昭和55)年築の一戸建て(土地は所有権、被相続人名義)を、
ご兄弟お二人で相続することになりました。
遺産分割協議中ですが、弟さんよりこの「空き家の特例」のことを
お兄様に話したところ、まずは弟さんが相続人代表として売却手続きをすることで
この不動産については話がまとまりました。
不動産業者さんに依頼したところ2020年6月に6,500万円で買い手が見つかりました。

この段階で、ご契約前にご相談者(弟さん)より、
以下の確認のご相談がありました。

1.「空き家の特例」の適用の可否は?
2. 兄弟二人が適用できるか、その場合どうしたらよいか?

1.については、法令で厳格に定められた要件があります。
1)物件に関するもの(築年数(1980年5月31日以前)、区分所有建物等でない)
2)居住者(相続開始直前に被相続人のみ居住など
(ただし老人ホーム等に入居など一定の要件緩和あり)に関するもの
3)敷地に関するもの(居住部分のみなど)
4)売却時期(相続開始から3年を経過する年の12月31日まで)
5)売却代金(1億円以下)
などなど「国税庁」のホームページを参照して、今回はクリアできそうでした。

次に、
2.について、不動産業者さんからは、家屋はほとんど価値がないので弟さんが
相続して、土地について2分の1ずつの相続でいいでしょうと言われていました。

もし、そのようにしていたら・・・・もちろん、弟さんはこの特例が適用され
ほとんど税金はかからないことになりますが、お兄様はNGで約3,000万円の
譲渡所得があったことになってしまいます!

なぜなら、あくまでもこの「空き家の特例」は【被相続人の「居住用家屋」又は
被相続人の居住用家屋の敷地等(アパートや駐車場などでない)】ことが大前提
ですので、「土地家屋とも」2分の1ずつで相続しなければならないのです。

不動産業者さんのミスリードで多くの税金をお兄様に負担させるところでした。

尚、この特例を利用する場合、家屋について一定の耐震基準を満たすものという
要件があります。
土地建物付きの売買をしてしまうとこの要件を満たさない場合が出てくるので、
一定の耐震基準を満たさないケース(ほとんどの場合)では、
売却時までに建物を取り壊しておくことも見逃せない要件となります。
さらに、譲渡所得の申告には、これら多くの要件とともに税務署に提出しなくて
はならない必要書類が多々あります。

不動産の税務に精通した専門家『税理士』に必ず、前もってご相談されることが
不可欠な制度と言えます。

大家さんの道しるべには、不動産に係るすべての場面で専門家がワンストップで
おります。お気軽にご相談ください。

次回は、「空き家バンク」などをご紹介していきます。

 

ABOUT ME
津曲巖
大手不動産会社にて相続・資産形成コンサルティング営業、管理職を歴任。都内を中心に数多くの土地有効活用、相続対策、資産の組み換え、買い換え等のコンサルティングを手掛ける。 ヘッドハンティングにより外資系金融機関に転身、不動産・保険を中心にFPコンサルタントとして 活躍。2002年独立系FP事務所設立。 不動産・金融機関での経験を活かし、上場企業、官公庁等での社員研修、マネー・ライフプランセミナー講師として、また、後進の育成にと全国で活躍中。 TVのCMでも有名なスーモカウンターや日本FP協会等でのFP相談ほか、企業の財務・営業コンサルティングも精力的に行っている。
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