~こんな時どうする?!大家さんの“生前”リスクを考える~
今月号は、保険×不動産マイスター 津曲(つまがり)巖(いわお)より、
お届けさせていただきます。
前回は、高齢化による認知症や身体介護になった時のリスク・ヘッジの
「切り札」ともいえる「民事(家族)信託」(以下「民事信託」と統一します。)に
ついて、その仕組みを復習しました。
今回も、もう少し「民事信託」のメリットをみていきましょう。
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● 「認知症」対策以外の「民事信託」のメリット・・・
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「民事信託」では、大家さんの存命中は、ご自身で管理・運営していた時と
同じように利益を得ることが可能です。
では、「委託者」である大家さんご本人が亡くなられたらどうなるのでしょうか?
「民事信託契約」は「委託者」(大家さんご本人とします)の死亡によって当然に
終了しますが、遺った「信託財産」は権利が帰属するものとして指定されたものに
なるのです。
ということは・・・
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● 「民事信託」は「遺言」に代わって財産の帰属先を決められる?!
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「民事信託」をすると、その財産は「委託者」(大家さんご本人)の
固有の財産から離なれて「信託財産」となります。
「信託契約」が終了すると遺った財産の受取人を指定することもできるのです。
それゆえ、特定のひとに遺したい財産があれば「民事信託」をすることによって
「遺言書」を書くことなく、その特定のひとの財産となります。
この意味で「民事信託」は「遺言書の代わり」になると言えますが、さらに、
「遺言書」以上のことも可能なのです。
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● 「民事信託」は「次々世代」へ託すこともできる!!
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上記のように「民事信託」を利用することで、特定のひとに財産を遺すことが
可能となりますが、その次の代まで「受託者」の承継先を指定することができるのです。
「遺言書」では、大家さんご本人が亡くなったとき、指定できるのはその時の
相続限りですが、「民事信託」ではその先の先までご自身の意思で
確定させることができます。
ここが「遺言書」と大きくことなる点です。
この面においても先まで見据えた対策を考えるならば「民事信託」は
とても有効な手段と言えます。
また、事業承継の場面でも、法人化している大家さんは「民事信託」で
「株式」などを「信託財産」にすることで贈与税がかかる生前贈与や
成年後見制度などを利用せずとも安心して事業承継対策をすることが
可能となります。
このようにメリットも多い「民事信託」ですが、
使い方次第で「両刃の剣」ともなります。
最終回は、そのあたりを解説させていただきます。