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遺留分を下げる方法はある?

渡邊浩滋の賃貸言いたい放題 第158回

今回から相続税の基礎から応用までわかりやすくQ&A方式で解説していきます。

Q 
相続人が私と弟の2人いますが、相続財産が不動産1つしかありません。
共有にしたくないので、
弟には遺留分程度の現金を渡すことを考えています。
私の負担をできるだけ少なくするために遺留分を下げたいのですが、
何か良い方法はありますか?

A
遺留分とは、相続人が最低限保証される相続分のことです。
法定相続分の1/2が遺留分となります。
ただし、相続人が直系尊属のみの場合は1/3が遺留分、
兄弟姉妹には遺留分がありません。

遺言書を書いても、遺留分の侵害があった場合には、
遺留分に足りない分を現金で請求することが可能になります(遺留分減殺請求)。

遺留分は権利なので、遺留分を侵害されたとしても、
請求しなくても問題ありません。
しかし、遺留分を請求されるか、されないかがわからないと、
遺留分を請求される相続人にとっては不安定な状態になってしまいます。

遺留分は家庭裁判所の許可を得れば生前に放棄することができます。
しかし、遺留分に見合う財産を生前贈与があったか、
強要されていないかなどの審査があり、かなりハードルは高いと言えます。

そこで事前に遺留分の割合を下げる方法を挙げてみます。

(1)養子縁組で相続人を増やす
相続人が増えれば、法定相続分の割合が減るため、遺留分も下がります。
増やした相続人にも遺留分が発生するため、
配偶者など協力関係にある人を養子縁組にする必要があります。

(2)現金を生命保険に変える
生命保険金は、受取人固有の財産になります。
相続財産から外れるため、遺留分の対象額が減ることになります。

しかし、保険金の額が大きい場合など、
意図的に遺留分を下げたと認められる場合には、
遺留分の対象になることがあります。

(3)生前贈与をする
民法改正によって、
生前贈与が遺留分対象になるかどうかの期間が明確になりました(民法1044条)。

相続人に対する生前贈与は相続開始前10年以内のものが対象。
相続人以外に対する生前贈与は相続開始前1年以内のものが対象になります。

相続人に対しての生前贈与は10年経過しないと対象から外れないですが、
相続人以外に対しての生前贈与は1年経過すれば対象から外れることになります。

相続人以外の孫への贈与は、遺留分対策としても有効になります。

なお、遺留分権利者に損害を与えることを知って贈与していた場合には、
贈与の時期にかかわらず(10年以上前のものであっても)
遺留分の対象になります。

しかし、これは、贈与者、受贈者の双方において、
遺留分を侵害する事実関係を知っているだけではなく、
将来において被相続人の財産が増加することはないとの
認識をもっている必要があると解されています。

事情を知らない孫へ、年間110万円など、
少しずつ贈与するのであれば、
この規定に引っかかる可能性は低いと思われます。

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ABOUT ME
渡邊浩滋
大家さん専門税理士事務所、渡邊浩滋総合事務所代表。当サイトを運営する大家さん専門税理士ネットワーク「Knees(ニーズ)」代表。 自らも両親から引き継いだアパートを経営する大家であり、「全国の困っている大家さんを助けたい」という夢を叶えるべく日々奔走している。 全国でのセミナー出演、コラム執筆等多数。
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