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【第385回】弁護士 関 義之が斬る!     「相続土地国庫帰属法について」 その4

●「相続土地国庫帰属法について」

こんにちは。弁護士の関です。

今月は「相続土地国庫帰属法について」
を書いていきます。

●国庫に帰属させることができない土地

今回は、相続土地国庫帰属制度により
国庫に帰属させることができない土地について説明します。
大きく2種類あり、
1.承認申請ができない土地
(申請の段階で直ちに申請が却下となる土地、却下要件)と、
2.帰属の承認ができない土地
(審査の段階で該当すると判断された場合に不承認となる土地、不承認要件)です。
法務省の下記ウエブサイトでそれぞれの要件について説明されていますので、
ポイントだけご紹介します。
「相続土地国庫帰属制度において引き取ることができない土地の要件」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00461.html

本制度による申請を考える場合には、
却下要件と不承認要件のいずれにも該当しないか事前によく検討し、
不明な場合には、法務局の事前相談で確認するようにしましょう。

却下要件

相続土地国庫帰属法(以下「法」といいます。)
では、次の①から⑤の土地については承認申請することができず(法第2条第3項)、
これに違反した場合には申請は却下されると定められています(法第4条第1項第2号)。

(1)建物の存する土地

(2)担保権又は使用及び収益を目的とする権利が設定されている土地
担保権の代表例は、抵当権です。
使用及び収益を目的とする権利の代表例は、地上権、地役権、賃借権です。

(3)通路その他の他人による使用が予定される土地として、
「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令」
(以下「政令」といいます。)で定めるものが含まれる土地
政令で定める土地は次の4つです。
ⅰ 現に通路の用に供されている土地
ⅱ 墓地内の土地
ⅲ 境内地
ⅳ 現に水道用地、用悪水路又はため池の用に供されている土地

(4)土壌汚染対策法第2条第1項に規定する特定有害物質
(法務省令で定める基準を超えるものに限る。)により汚染されている土地

(5)境界が明らかでない土地その他の所有権の存否、
帰属又は範囲について争いがある土地
境界が明らかな土地とは、前述のウエブサイトでは、
次の2つを満たしている土地をいうとされています。
ⅰ 申請者が認識している隣接土地との境界が表示されていること
ⅱ 申請者が認識している申請土地の境界について、
隣地所有者が認識している境界と相違がなく、争いがないこと

不承認要件

また、相続土地国庫帰属法では、次の(1)から(2)の土地は
国庫への帰属が承認されないこととされています(法第5条第1項)。

(1) 崖(勾配、高さその他の事項について政令で定める基準に該当するものに限る。)
がある土地のうち、その通常の管理に当たり過分の費用又は労力を要するもの
政令で定める基準は、
勾配(傾斜がある部分の上端と下端とを含む面の水平面に対する角度をいう。)
が30度以上であり、かつ、その高さ
(傾斜がある部分の上端と下端との垂直距離をいう。)
が5メートル以上であることとされています。
過分な費用又は労力を要する例について、前述のウエブサイトでは、
「住民の生命等に被害を及ぼしたり、
隣地に土砂が流れ込むことによって被害を及ぼす可能性があり、
擁壁工事等を実施する必要があると客観的に認められるような場合などが考えられます。」
と説明されています。

(2) 土地の通常の管理又は処分を阻害する工作物、
車両又は樹木その他の有体物が地上に存する土地
想定される有体物の例として、前述のウエブサイトでは、
建物には該当しない廃屋や放置車両などが挙げられています。

(3) 除去しなければ土地の通常の管理又は処分をすることができない
有体物が地下に存する土地
想定される有体物の例として、前述のウエブサイトでは、
産業廃棄物、古い水道管、浄化槽、井戸などが挙げられています。

(4) 隣接する土地の所有者その他の者との争訟によらなければ
通常の管理又は処分をすることができない土地として政令で定めるもの
政令で定めるものは次の2つです。
ⅰ 民法第210条第1項に規定する他の土地に囲まれて公道に通じない土地(袋地)
又は同条第2項に規定する事情のある土地であって、
現に同条の規定による通行が妨げられているもの
民法210条第2項に規定する事情のある土地は、
池沼、河川、水路若しくは海を通らなければ公道に至ることができない土地、
又は崖があって土地と公道とに著しい高低差がある土地のことです。
ⅱ 前号に掲げるもののほか、所有権に基づく使用又は収益が現に妨害されている土地
(その程度が軽微で土地の通常の管理又は処分を阻害しないと認められるものを除く。)
想定される例として、前述のウエブサイトでは、
申請地に不法占拠者がいる場合が挙げられています。

(5) 前各号に掲げる土地のほか、
通常の管理又は処分をするに当たり
過分の費用又は労力を要する土地として政令で定めるもの
政令で定めるものは次の5つです。詳しくは前述のウエブサイトをご覧ください。

ⅰ 土砂の崩壊、地割れ、陥没、水又は汚液の漏出その他の土地の状況に起因する
災害が発生し、又は発生するおそれがある土地であって、
その災害により当該土地又はその周辺の土地に存する人の
生命若しくは身体又は財産に被害が生じ、又は生ずるおそれがあり、
その被害の拡大又は発生を防止するために当該土地の現状に変更を加える
措置(軽微なものを除く。)を講ずる必要があるもの

ⅱ 鳥獣、病害虫その他の動物が生息する土地であって、
当該動物により当該土地又はその周辺の土地に存する人の生命若しくは身体、
農産物又は樹木に被害が生じ、又は生ずるおそれがあるもの
(その程度が軽微で土地の通常の管理又は処分を阻害しないと認められるものを除く。)

ⅲ 主に森林として利用されている土地のうち、
その土地が存する市町村の区域に係る市町村森林整備計画に定められた森林法
第10条の5第2項第3号及び第4号に掲げる事項に適合していないことにより、
当該事項に適合させるために追加的に造林、間伐又は保育を
実施する必要があると認められるもの

ⅳ 法第11条第1項の規定により所有権が国庫に帰属した後に
法令の規定に基づく処分により国が通常の管理に要する費用以外の
費用に係る金銭債務を負担することが確実と認められる土地

ⅴ 法令の規定に基づく処分により承認申請者が所有者として
金銭債務を負担する土地であって、法第11条第1項の規定により
所有権が国庫に帰属したことに伴い国が
法令の規定により当該金銭債務を承継することとなるもの

ABOUT ME
関 義之
「関&パートナーズ法律事務所 代表弁護士」 平成10年 3月に早稲田大学法学部を卒業し、 その年の10月に司法試験に合格。 1年半の司法修習を経て、平成12年10月から弁護士登録。 平成23年10月から中小企業診断士にも登録。 法人・個人を問わず幅広く紛争に関する相談を受け、 代理人として示談交渉や訴訟等に対応するほか、 契約書の作成・チェック等、 紛争が生じる前の予防法務にも力をいれている。 不動産の賃貸・売買や、 遺言・遺産分割・遺留分など相続に関する相談を、 幅広く受けている。 特に力を入れている分野は、中小企業の事業承継支援。 セミナー経験多数。 詳しくはWebサイト参照  https://seki-partners.com/
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